font-size       
真性ホモ
はぁ・・・と思わずつきそうになったため息をかみ殺し。
代わりに、頭をバリバリとかきむしった。

普段悩むことなんざほとんどねえし、即断即決即実行の俺がココまで困ってるってこともそうはねぇ。
だてにイーストの魔獣だなんて呼ばれてねぇんだ俺は。
だってそうだろ?気にいらねぇことがあったら、俺はいつもこの腕っ節で何とかしてきたんだからよ。

だがこれは・・・。
いやもう・・・本当に・・・。

誰か何とかしてくれと俺は言いたい。



「ぶえええぇぇぇぇ〜〜〜んっ!」

ヤツは、まずとにかく大声で喚く。

「えぐっ、えうっ、ひ、ひぅぅっ・・・ひっひっ、んくっ・・・ずびーーーーーっ」

何度かしゃくりあげて、キタネエ音しながら鼻水啜り上げて。

「あうっ、え、えぅっ、う、う、ううええぇええぇぇぇ〜〜〜〜〜〜〜ん!」

やっぱりまた喚く。

このくだらなくもどうしようもない強敵は、ハンカチだけじゃ飽き足らず、
バスタオルを握り締め、ついでに噛み締めながら泣き喚く。
俺は、なすすべもなく、ただふわふわの金髪をよしよしと撫でるだけ。
別に撫でること自体はかまわねぇんだ。このさらさら感は結構気に入ってるし。

だけどなぁ・・・これは、ちょっと・・・いつものこととはいえ、勘弁して欲しいと思う。

剣士ともあろうもの、敵前逃亡なんざ恥のまた恥・・・なんだが・・・
今の俺には『世の中には戦術的撤退って言葉もあるんだぜ?』
と、ウソップが口にする言葉が非常に良くわかる。
つーか、守銭奴の魔女と泣き喚くコックには勝てる気がしねぇ。

「サンジ。」
「うえっ、えっ、えぐっ、ひ、ひ、ひいぃい〜〜〜〜〜んっ」
「おいサンジ。いい加減に泣き止めよ。」
「うっ、うっ、うぅっ、うぎゃーーーーーーーー!!うああああぁぁぁ〜〜〜ん!」

夜中だってのに、サンジはラウンジの中でさっきっから泣いたまま。
しかも、バスタオル持ってるもう片方の手に酒を持ってんだから更に性質わりぃ。

ったく、いつもはすかした面してるくせに、ガキみてぇに泣く。
鼻水はたれてるわ、しゃっくりはとまんねぇわ、ホントにみっともねぇ。

サンジが握り締めてるバスタオルの端を持って、顔を拭いてやる。
するとサンジはすんすんと鼻を鳴らしながらぼそりと呟いた。
どうやら「ゾロ」と俺の名を呼んだらしい。

「なんだ?」
「っぞろ。」
「だからなんだ?」

そのとたん、サンジの顔がまたくしゃっとゆがんだ。
あ、ヤバイ。

「ぶええああぁぁううえええええんんふぎいいあああああああああああああああああん!!」

キンっと、脳天に響く怪音波が轟き。俺はとっさに耳をふさいだ。
だが、それでもヤツの喚き声は防げない。

今日も今日とてヤツは、同じようなことを喚き散らすのだ。


「あぎああぁうぅうえええあああああー!!!ゾロが浮気したあああぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜!!!!!」

「だからしてねーーーーっつーの!!!!」






ここで。「え?!ゾロ浮気疑惑!!」と思ったやつに対して、
まぁ普通はしねぇが、名誉のために言わせてもらうとすれば。

俺はきっぱりと無実だ。あぁ、潔白だとも。
それこそサンジの肌の色か米くらい白だぜおれぁ。
なのに、なぜヤツがああも喚いているかっつーと・・・原因は。

俺が、道に迷った際、女に港までの道を聞いたから・・・だ。

や、マジだ。嘘なんざついてねぇぞ。
とはいえ、女っつっても、年のころは40過ぎ。日に焼けてしわの多い女だった。
あんまりに迷いすぎて、人気のない場所を3時間以上歩いてやっと見つけた人間だったから。
そいつに道を聞いて「そうか、右だな」ときびすを返したとたん、あいつの蹴りが飛んできたってわけだ・・・。

それが、ただ単に迷ってた俺への制裁とかツッコミとかならまだいい。
だが違う。あいつのは、つまり・・・俺が言うのもなんだが・・・つまり『嫉妬』だ。
まぁ、少々の嫉妬なら俺も「可愛いやつめ」ですむんだけどよ。

最初は、階段でこけそうになった女に手を貸してやったときだ。
後でいきなり蹴られて、いったい何のことか真剣に考えちまった。
俺が女に話しかけようとしたときは、そのまま足を踏みつけられたし。
年頃の女に声をかけられたときなんざ(所謂逆ナンだな)、思いっきり街中で泣きやがった。
最近は、それこそ女の方が俺を盗み見てるのでさえ嫉妬する。

そりゃぁ、一人で旅をしてた頃は、女が良く誘ってくるから、
一宿一飯の恩の代わりに抱いてやってた時期はあったけどよ。
サンジと恋人になってからは当然浮ついたことなんざしたことはねぇと誓って言える。
そもそも、俺が一度付いた約束を違えると思ってんのかこいつは。
俺は確かに、サンジに愛していると告げた。
一生放さねぇとも言った。
心変わりなんざしたら、殺してやるとも言った。
どれも俺の本心だ。
それほど俺はサンジに惚れてる・・・。



あんまり泣いてるもんで、サンジの目の下が腫れている。
それなのにまた無理に擦ろうとするもんだから、ぐいっと両腕をつかんで、それを止めさせた。
サンジは、しばらくは自由にならない腕を不満そうな顔で見つめていたが、
また悲しくなったのか、今度は「ひぃん」と喉の奥で泣き声をあげた。
ほ、ほ・・・本気で情けねぇツラ(脱力)

「なぁ、おい。」
「ひぃ〜〜。ひぐっ、ひ、ひ、ひぃ〜ん」
「いい加減泣き止めよ。」
「ひぎゃーーーーーー、うえーーーーーー!あびいいいいいい!!」

わざとかこんクソガキが!!!
その一言を必死で飲み込んで、俺は何とか優しい顔を作ってやる。
・・・多少引きつってることに関しては目をつぶれ。

「いいから、泣き止め、な?あんま泣いてると、お前の可愛い顔が台無しだろ?」
「ぶひっ!?」

いくらなんでもその反応はどうだよ、こんのクソコックっ。
・・・わかってんだよ!自分がドンだけ寒いこといってるかっつーのは!!
一度この場面をウソップに見られたことがあるが、
ヤツと来たが一気に青ざめた顔しやがって、その夜にはスゲー顔してうなされてやがった。
それだけの、破壊力があるっていいてぇんだろうが、もう、これ以外どうやって泣き止ませばいいっつーんだ。

だが、俺の言葉に驚いて、しばらく泣くことを忘れていたサンジは。
俺に腕をつかまれたまま、またもしくしく泣き出す。
今度はいったい何が気にいらねーんだよ、クソ!

「・・・・・・っ、じゃ、・・・・・・もん。」
「あ?聞こえねぇ。もっかい言え。」
「か、・・・わいく・・・ねーもん!」
「あぁ??!」
「おれ。かわいく、ねーもん!れ、れ、れでぃには、まけるし!」
「はぁ?おいまて、俺はいつ女とお前を比べたことがある。」

「だっで・・・俺ぁ、赤ちゃん産めねぇ・・・。」

くしゃっと又顔が泣きっ面にゆがんだ。

「れでぃには・・・おれ、かてねぇもん。」

どんな見た目でも、どんな年齢差が合っても。
レディは美しく光る何かを持ってる。
それは女が生まれつき持っているともいえるもので、
「あなたの子供を産んであげる」
そんな魔力に男は勝つことができない。

だから、俺が今サンジに惚れているんだと何べん言っても。
いつか何かのきっかけで、俺が女のほうがやっぱりいいやと思うんじゃないかと
怖くて仕方がないんだと、こいつは言う。




「わかった!テメェだけには俺の秘密を教えてやらぁ!」
「ひびつ?」
「おう、俺はな。生まれてこの方野郎にしか興味がねぇ!(どーん)」

嘘だ。

「・・・マジ?!え、れ、レディのおっぱいとか見て興奮しねぇの?!」
「あぁ、しねぇ。てめぇみてぇなまったいらな胸に乳首がぽちっとある感じが良い。」

大嘘だ。どっちかと言えば、巨乳のほうが揉みがいがあって好きだった。

「マスかくときも、レディのすばらしいアソコとか想像するんじゃなくて、
野郎のケツの穴想像してやってたのか!」
「あぁそうだ。女のマンコより、ケツのほうが締りが良い。」

つうか、お前に惚れてなけりゃ、男のケツの穴なんざ生涯縁はなかったはずだ。

「レディとヤって、自分の子供孕まそう・・・とか、思ったことは・・・ねぇの?」
「ねぇよ。」

確かにないわけじゃない。
子孫を残そうとするのは男の本能だ。
だが、そんなもん、こいつと生涯を友にしようと誓った時点ですっぱり切り捨てた。
俺にガキなんざいらねぇ。


「なんだよ。お前真性ホモだったのか。」
「そうだよ、わりぃか。」
「・・・イヤ、悪くねぇ。レディならともかく、野郎なら俺、負ける気しねぇもん。」
「そりゃよかった。じゃぁ、もう泣くなよ。」
「泣くよ。」
「何でだよ。」
「だって、だってよ。うれしーんだもん・・・・・・」

又サンジが泣き出した。
さっきみたくぎゃんぎゃん、あほみてぇな面で俺にしがみつきながら泣く。
俺はもうこれこそどうしようもなくなって、背中を撫でてやったり頭を撫でてやったりすることにした。

「疑うな。」

涙でべちょべちょの頬にそっと触れて俺は言った。

「他のヤツはどうだかシラネェが、俺の約束は絶対だ。お前知ってんじゃねぇか。」

サンジは、「うん」と頷く。

「惚れてんだ、お前に。」

繰り返し俺は言う。

「サンジ。」

耳元で囁く。何度も。

「惚れてる。大事なんだお前が。だから泣くな。」

お前が悲しい泣き方をしないためなら、
俺は、真性ホモくらいなってやれるんだ。
































それから・・・また次の日のことだ。
ふと、コックがいる方向を見ると。
パラソルの下で、本を読んだり海図を書いている女どもに媚を売りながらへらへらしていやがる。
機嫌が治ったのはいいことだが、非常に不条理な気がしてしまうのは俺の気のせいか?!

俺だって、嫉妬をしないわけじゃない。
と言うか、これは俺が不機嫌になってもいいんじゃないのか?
などと、つい集中を乱してしまい、ぎりっと歯を食いしばって振っている鉄の串団子だけを見つめる。

「ゴラァ!クソダーリン!おやつが出来てっから、さっさとその汗クセェ真似やめてこっちにきやがれ!
爽やかな午後の風に、水を差すんじゃネェヨあほんだら!」

・・・やっぱ、俺は一度怒っていいはずだ。
クソ、今夜覚えていやがれ。ぜってぇ足腰たたねえほどぶっ続けで犯してやるっ。

ともかく、トレーニングを終え。鉄の串団子を倉庫に持って行こうとした時・・・・・・

「あぁら、ぞろーv聞いたわよ?あんた、真性ホモだったんだって?」

ごと!

・・・・・・思わず力が抜け、もっていた串団子が手からすっぽ抜けた。

「あ、こら危ないじゃないのー。床が抜けたら自分で治しなさいよ?」
「ウフフ、色々大変ね剣士さんも。」

ぎりぎりぎりっと首をサンジの居る方向に向けると、
なぜか、サンジが真剣な顔でガキどもに
「いいか!ゾロは真性ホモだが、俺のもんだからな!!
ゾロの前でケツ出して誘惑しようとしたら蹴り殺すからそのつもりでいろ!!」
とか何とか、阿呆な事を言って
「おお!!ゾロって真性ホモなのか!!すげぇ!」だの
「シンセイホモって何だ?美味いのか!?」だの
「いや、そんな事考えるのお前だけだから・・・・・・」だの言われている。

俺はもうなんだか全ての力が抜けてしまい、ぐったりと手すりに寄りかかった。
その俺の背中に声がかかる。

「ま、でも、すべては愛のためね。がんばんなさいよゾロ。
応援だけならただだからしてあげるv」
「そうね、がんばって。」

女どもからは、そんな言葉をもらい。鼻からは同情の眼差しをもらう。
もちろんこの態度からあいつらは真実を知っているのだろう、俺が元はノーマルだと。
でも、あえて言わないのが友情というやつなんだろうと、俺は思い込むことにした。


とにもかくにも、

愛は・・・・・・寛容。






END









鼻水たらして大泣きするサンちゃんが書きたかっただけ(爆)


作品に戻る
TOP