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本気でキレた事は、何度か経験がある。 比喩じゃなく目の前が真っ赤に染まり、気がついたら身体が勝手に動いて、 その原因をぶん殴ったり、とにかく後先考えずに無茶をした。 一応、反乱軍のリーダーになってからは、それじゃいかんと自分を戒めたりもし、 それなりに自分をコントロールできていた。 だが、それなりと自分で認識しているうちは、やはり「それなり」でしかないわけで。 ぶっつりと、何かが切れる音を聞いてしばらくすると。 俺は、大勢の野郎共が地に伏している真ん中に一人で立っていた。 「そんな他力本願なこと考えながら、 アラバスタの復旧に一役かってるなんてでかい口叩こうとすんじゃねぇ!!!」 誰の血だか知らねぇが、それをこぶしから滴らせながら俺は吼えた。 この愛する大地の上で 3 「ぶわっかもんがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」 聞きなれた罵声が耳を劈く。 だが、聞きなれちまったもんは聞きなれちまったわけで、 俺は小指で耳をほじくりそのままそっぽを向いた。 「お前は、何のためにここにおるのだ!ユバの復旧のためではないのか?? それなのに、貴重な人手をぶん殴ってどうする!!」 酷い者など、全治2ヶ月じゃ!と、親父は唾を飛ばしながら激昂していた。 さすが俺だな、と思う。 あれだけぶっちぎれておいて、一人も殺さなかったって言うことは、 なんだかんだ言って成長しているのかも知れねぇ。そう考えて、ふふ、と笑った。 「何を一人で笑っとるか!!」 ずびしっ 親父チョップを首に食らって、少し息が詰まった。 「まったくお前は、まだあの時の傷も完全に癒えてはおらぬと言うのに。 なんなんだっその血の気の多さは!」 「知るかよ。親父に似たんじゃねぇの?」 ゴキブリ並のしぶとさだからな。お互い。 「まったくこの馬鹿は反省すらする気が無いのか!!!!」 俺は少し黙ってから口を開いた。 「・・・・・・反省なんざする必要はねぇ。 奴らのは自業自得だ。」 もう何を言っても無駄だと考えたのか、親父はふんっと鼻を鳴らす。 「どうやら、傷が癒えてきたと同時に血の気も復活してきたと見える。 そんなに力が余っているのならば、ここで働かせているだけではもったいないな。 お前、これからアラバスタに行って来い。」 「はぁ??何でいきなり話が飛ぶんだよ。」 「飛んじゃおらんわ! 今、アラバスタは志願兵こそ多いが、王族を警護するだけの実力の持ち主達が少ないのだ。 そこでがんがん揉まれて、少しはマシな人間になってこい!」 「あのなぁ。いくらなんでも俺が・・・・・・」 「いいから行ってこんかい!この、馬鹿息子!」 そういって俺を蹴り出した親父は、 たぶん・・・・・・最初っから知っていたんだろう。 ユバを追い出されて、砂漠の中を一人歩きながら。俺は、昔のことを思い出していた。 あの時も、こうやって砂漠を歩いていた。 空気に一欠けらの水気も無い。ムカつくほどいい天気だった。 仲間の死に打ちのめされて、枯れ行く町の姿に絶望して。 それでも、あいつが城に居る限り大丈夫だって思っていたのに。 俺の希望は、ある日あっさり姿を消した。 何を信じて良いのか、分からなくなった。 『信じろコーザ。』 親父の言葉がよみがえる。 分かっているさ。 あんたが王を信じているのと同じように。俺だって今だにあいつを信じている。 あれだけ絶望を味わった今でも、それでもあいつを裏切れねぇ自分が居る。 会っていた時間なんて、本のわずかなものだった。 約束だってただの口約束だ。それもガキの他愛も無いヤツで・・・・・・。 ネフェルタリ・ビビ。俺の親友。 子供心に命をかけても助けてやりたいと思わせた娘。 あいつは、いい女王になる・・・と、無邪気に信じることができた。 この国は変わっちまった。 そう思わずにはいられない現実がここにある。 仲間に指示を出し、如何に反乱を成功させるか考えながら。 俺は、この青空の下のどこかに居るだろうあいつを思いながら、心の中で絶叫した。 『早く。一刻も早く帰って来い!!反乱軍は、この勢いはもう止まらねぇ。』 あいつがこの世に居ないことなんて想像すらしていなかった。 絶対に昔と変わらない眼差しでどこかに生きているんだと。 『反乱軍はもう俺が動かせる域を超えちまった。 後はもうその勢いに流されるだけの激流と化すだけだ。』 あと俺に出来る事は、極力一般人への暴力を避けるようにと、 反乱軍全員の脳髄に叩き込んでやるだけ。 「もうこの国は終わりだ。」 死んでも言いたくなかった台詞を吐いた。 空は、相変わらずむかつくほど晴れていて。 それは、あいつの柔らかな髪を思い出させた。 一目あいつの姿を見たかった。 そうすりゃ、どんな狂気だって収められるだけの力が湧いてくるような気がした。 けれど・・・結局それはかなわなくて。 3年ぶりに降った雨をぼんやり見つめながら。 俺は、ただの負け犬でしかない自分に歯噛みするしかなかった。 |