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この愛する大地の上で 序章

 これは、子供の頃にイガラムから聴いた話だ。

「ねぇ、イガラム!パパとママはどうして結婚したの??」

 男女と言うものを認識し始めた子供が、必ず一度は興味を持つ、父と母の馴れ初め。
イガラムはいつもどおりの優しい笑顔を浮かべて話してくれた。

「なんでも、お若い頃に国の行く末のことで喧嘩をして、
お后様が王を平手で打った事が始まりだそうですよ?」

「ママがパパをぶったの??!」

「ええ、そのようで。」

 私は、母のイメージと言ったら、優しく子守唄を歌ってくれた記憶と、
写真立ての中で微笑む姿しか知らなかったので、そのギャップに大いに驚いた物だ。

 母は、特に貴族でもなんでもない一般の人間だったそうだ。
ただ、長年この地域の気候や植物を研究する科学者であったようで、
その事と国の方針が食い違った際に、
その後国中で噂されたほどの大喧嘩を繰り広げたらしい。

でも、一般人が王に手を上げるなどもってのほかだ。
だから、たとえ母の言っていることが正論であったにしても、
母は罰を受けることになった。

そして、それを庇ったのが父らしい。
「彼女は私の恋人で、あの喧嘩は犬も食わぬと言う奴だ。
この年から尻に敷かれているようでは、私もいかんなぁ。」
と、笑い飛ばしたのだとか。

それから、少し大きくなって父に「どうして?」と尋ねてみると。

父は私の頭を撫でながら。
「こんなにもこの国を愛しいる女性と一緒にこの国を治めていくことができたら、
どんなに幸福だろうか、と思ったのだよ。」と。

もっとも、その後「大きなお世話だ。」と、
また怒った母との大喧嘩が待っていたそうではあるが。



なんだかんだ言って、父と母は、
王族ではなかなか成立しない『恋愛結婚』と言う物を果たしたらしい。


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