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ワンピース版 暴れん坊将軍 七

さて、ビビと出会ってさらに三日後。
サンジは、とある団子屋に来ていた。
そこそこ人気のある店らしく、それなりに人の出入りは多い。

「そこの素敵なマドモアゼル。俺の為に、抹茶団子を一つ出しては頂けないかな♪」
「はぁ〜い、抹茶団子お一つですねぇ〜?
好きなところに座ってお待ちくださ〜い♪」

言われたとおり、適当なところに座って、懐から出した煙管に火をつける。

「さ・て・と・・・・・・。」

 サンジは、そこでふぅ〜と煙管の煙を吐くと、おもむろに・・・
「コンカッセ!」

 ごち!

「おふ!・・・・・・・・・・・・・・ああ、寝てた。」
「おお、クソぐっもーにん。
折角可愛いお嬢さんが出してくれた団子なのに、途中で寝てるんじゃねぇよ。」
「いやぁ〜悪い悪い。ついついな。
あ、おじょーちゃ〜ん!お茶もういっぱいくれるぅ〜?」

片手に4〜5本の串団子を持ったままで寝ていた男はエースという。
一見すると頭の先から爪先まで「遊び人!」という感じ、
今のサンジと一緒にいると、「ダブル遊び人!必殺ナンパ人!」と言う感じなのだが、
人は見た目に寄らぬもの、将軍家に代々仕えるお庭番の一人だ。

「ところで、家の弟は元気にしてたかい?」
「あん?昨日も泊まりに行ったが、相変わらずメシーメシーってうるせぇよ。」
「ははは、そうかー元気か。ならいいや。」

 ちなみに、サンジが御忍びの際に、ルフィの家を使うようになったのも、
エースからの紹介だったりする。

「ところで、お前もいい加減こういう場所で待ち合わせるのやめねぇ?
人通り多すぎだろ。」
「大丈夫大丈夫!何とかなるって。
それに、なによりもこの。・・・黒蜜のかかった、団子がうんめぇんだもん!
あ、ちなみに、これお土産に包んでもらった奴だから、弟とナミちゃんに持って帰ってあげてね♪」
「相変わらず、弟夫婦に甘い奴だな。」
「そりゃぁ、甘くもなるだろ〜♪あの愚弟が、あんなにかわいいお嫁さん迎えちゃったし♪」
「ま、ナミさんは可愛いからな!そこだけは激しく同意するぜ。
んで?首尾はどうだった?」
「そりゃ、俺が失敗するわけないじゃん。
ちゃーんと、噂のコーザ君との接触は取れました♪」

そう言って、畳んだビビの風呂敷をサンジに手渡す。

「それで?」
「んーまぁ、普通に拷問受けてた。」
「・・・・・・そうか。」

「それから、特別扱いうけてたぜ?
あんまり歓迎できねぇけど、すげぇVIP扱いだ。」
「特別扱い?」
「あぁ、そもそも、大牢に居なかったもんよ。」
「なにぃ?じゃ、どこにいたってんだ。」
「揚座敷・・・・・・。」

大牢とは、主に農民や町人が叩き込まれる牢であり、
大体30畳ほどの広さの部屋に、最大で90人も入れられてしまうという。
困ったもんだの牢屋のことである。

そして、揚座敷とは、基本的には数人一緒に入るように出来ている牢屋敷の中で、
ここだけ独居房なのである。
基本的には、位の高い武士や、高僧が入るためのもの・・・・・・。

「よっぽど、人目につかせたくなかったらしい。
ま、だからこそ、接触もしやすかったんだけどさ。
大牢だったら。ちょっと骨が折れてたし。」

さすがに、その部屋に居るやつら、全員ボコって、気絶させてからゆっくりお話〜。
ってわけにはいかねぇからなぁ〜。
と、隠密らしからぬボヤキをもらした。

「ま、でも、いい男だったな。
その、ビビって子。なかなか男を見る目があるね。
俺としては、是非部下にほしいなーって思うんだけど、どうよ?」
「アホか。とにかく、どんな様子だったかまず報告しろや。
世話話から先に入るんじゃねぇ。」
「おーっとすまんすまん。えーっとだなぁ。」




俺が忍び込んだ時、まさに取調べという名の拷問の真っ最中だったのよ。
・・・・・・と、エースは語り始めた。

拷問の辛さに耐え切れず、嘘でも罪を肯定した瞬間にすべてが決まる世の中だ。
二人の男達が、天井からつるされたコーザを、竹でもって打ち据えていた。

エースはそれをじっと見つめ、辛抱強く待った。
今むやみに助けるわけにはいかないのだから。

コーザは、普通の人間ならば精根尽き果てていてもおかしくは無い状況で、
尚、その瞳に力を保ち続けていた。

流石に息は上がり、長い責め苦のために疲労もたまっているだろう。
体中に鬱血した後があり、所々肉が裂け血が流れている。
それなのに、音を上げるどころか、逆に相手を睨みつけ、
その殺気は拷問師ですら慄いたほどだった。

いずれ彼らは舌打ちをし、今日はもうやめだとコーザをもとの独房に戻した。

エースは、誰もこの部屋に近づいてくるものがいないことを確認し、
ではそろそろ姿を見せようかと思った瞬間。

「・・・・・・で?アンタ誰だ?さっきから人のことじろじろ見やがって。」

 ・・・・・・と、そう語りかけられた。

 さすがにこれは、エースもびびった。
 お庭番として、実力も資格も十分であるはずの自分の気配をまさか察知されているとは。
 だが、ばれているのならば仕方がない、と、さっさと腹をくくり。
 素直に天井から降り立つ。

「びっくりしたなぁ。まさかばれているとは思わなかったぜ。まぁ、驚かれるよりはましだけどな。
いつごろから気がついてた?」
「結構最初から、あのボケどもが頭に血ィ上らせて、むやみやたらに殴ってきたあたりで入ってきただろ?」
「あーらら、こりゃ降参。お前はゾロと一緒だな、生まれる時代を間違えたぜ。」
「別に?俺は、今の時代に不満は無い。現状には多少あるがな。」
「はは、そりゃぁ同感だ。」

「それで?あんたは、ゾロの・・・・・・?」
「はは、まぁ顔見知りって程度かな。正確には別口、別の人に頼まれてきた。
今回は、あんたに渡すものがあってきたんだ。
まずはこれ。」

エースは小さな紙に包まれた丸薬を差し出した。

「俺が良く使う物のおすそ分け、これ一粒食べれば、そう簡単には死なねぇよ。
ま、死ぬほど苦いのが難点だが。
そして次に、塗り薬。ちゃんと隠しておくんだぞ?
んで最後に・・・・・・。」
「・・・・・・ビビ。」
「おやま!包みだけでわかっちゃう?!流石だねー愛だねー照れちゃうね〜!」
「うるせぇな。」
「まぁいいさ、早く食ってやれ。」

 握り飯であった。握り方が甘いのか、しっかりとした形を保っては居なかったが。気にせずかぶりつく。
口の中が切れて痛いだろうに、そんな顔はおくびにも出さずに、米の一粒まで大事に噛んで食べた。

「とにかく、あと3日の辛抱だ。そうすりゃ月も変わって、今度は南町奉行の管轄になる。
したら、ゾロの特権で、お役御免の判子もらって、こことはおさらばだな。」
「いいのか?それにゾロは堅物だ。そんなことを許すはずが・・・・・・」
「バーカ。もともとでっち上げなんだから、んなこと気にしなくったっていいんだよ。
それに、こういう時に権力を使わないで、いつ使うってんだ。・・・・・・と、俺の上司なら言うね。」
「どういう上司だそれは。」

・・・・・・コーザも、まさか天下の将軍がそんな人間だとは思うまい。

「あ、なぁ。もしよければ、ビビに伝えておいてくれないか?」
「心配するな、なーんて伝言は受け付けてやらねぇぞ?」
「・・・・・・あいつは、昔から心配性だからそれは無理な話だろう。
だから・・・・・・」
「だから?」
「握り飯、美味かった。俺はちゃんと食っているから、お前もちゃんと食ってちゃんと寝ろって。」
「なるほどね。食欲不振や寝不足はお肌に悪いもんな。OK了解した!
それじゃ、死ぬなよ!」
「ああ・・・・・・死なねぇよ。」
















「とまぁ、こんな感じ。
あいつなら、これからも早々音を上げたりしねぇよ。」
「そうか・・・・・・ならいい。
んで?他には何か?」

「あぁ・・・・・・そういや、捕まった本物の盗賊団のほうだけどよ。
とっくの昔に、拷問やりすぎて殺しちまいました。だってさ。」
「なにぃ!!」
「まぁ、首を一気に刎ねる拷問なんざ聞いたことねぇけどな。」

普通それは拷問と言わない。処刑と言う。

「・・・・・・そうか、そっちのほうはもう用済みだったんだな。
逃げたほうのはどうなった?」
「関西方面に向かう途中で、身元不明の死体がいくつかあがってたみたいだ。
ご丁寧に、顔もつぶされててな。
おかげで証拠にはならねぇが、まず間違いねぇだろ。」
「クソ、証人になる可能性の奴はことごとく殺されちまったってことかよ。」

コーザにはああいったが、
たとえでっち上げたとしても、ここまで人の噂になってしまった事件の容疑者を、
あっさりと無罪を言い渡す事は難しい。

せめて主犯の一人でもとっちめる事が出来ればよかったのだが、
流石に敵も考えているという事か。

「ナミちゃん達にも要請を頼んだんだろ?
なんか掴めたって言ってたか?」
「ああ、もちろんだ!だが・・・・・・ロビンちゃんが帰ってきたら考える。」
「なにぃ!!ロビンも、今回のことで動いてんのか!!」
「当たり前だろうが、お前だけに任せたりするかっツーの。」
「ぐあああああっ、それなら何で俺にいわねぇんだよおおお!!
俺もロビンと一緒に探りにいきたかったのにいいいいいいい!!!」
「誰がテメェみてぇなクソ野郎と、ロビンちゃんを一緒にさせるかってんだ!!」
「なにいいいい!!横暴だぁぁぁぁ!!スタッフサービスに電話入れるぞこの野郎!!」
「そりゃこっちの台詞だ!!仕事中に、ロビンちゃん口説くなんてまねはさせねえええ!!」


「クラッチ!」
『ぐはぁ!!』
「二人とも。お店の中で喧嘩はいけないわ。」

そこにいたのは、薄紫の着物をすっきりと着こなした黒髪の女性。

彼女の名はニコ・ロビン。
エースと共に将軍家のお庭番を務めるもう一人の人物である。

美しくも、隠密と暗殺を得意とする女は、ウフフと華のように微笑んだ。


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