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風は良好、本日は晴天なり。

ただし、時々海王類の襲撃あり・・・と。




どっぱあぁぁぁーーーん!!と、派手な水しぶきを立てて、
恐竜に似たでけぇトカゲの海王類が目を回してぶっ倒れた。
「うっほーーー!!」と、我がキャプテンの嬉しそうな声があがる。
隣では、カタナを鞘に収めた『キンッ』と言う涼やかな音が響き、
俺は軽やかに甲板に着地した。

「よーっし!ルフィ、ゾロ、サンジ!俺の作戦通りによくやったー!」
「えー!今の、ウソップの作戦だったのか!すっげぇ〜〜!」
「サンジー!!にくにくにくーーーーー!!!今日の晩飯は肉だーーーー!」

無邪気な3馬鹿トリオを眺めながら、俺はタバコに火をつけて「ふ」と笑う。

「あぁ、判ってるよ。今から切り分け作業に入るからちっとは大人しくしてろ。
おい、そこのマリモマン手伝え。」
「あー。おう。」

ぷっかりと浮かんだ海王類にちょいと乗っかり、
大体の骨格を調べてから、どう切り落とすかをゾロに伝える。
適度な大きさに斬ったら、後は俺の仕事だな。

タバコをぷかぷかさせながら、丁度運びやすい位の大きさに切り刻んでいく姿を見ていると、
ふと、ゾロがこっちを見て・・・笑った・・・気がした。

慌てて下を向いて、前髪で顔を隠す。
やっべぇ、誰にも見られちゃいねぇだろうな?
ごうごうと顔に血が集まっているのがよくわかる、
多分・・・どころか確実に俺の顔は真っ赤っかーだ。

なんだか、身の置き場がないっていうか、
そわそわしちまって、ただぷかぷかとタバコの煙をふかした。



・・・そう。

俺とゾロは・・・つい最近、こ・・・恋人同士って・・・奴になった。




って、ぎゃーーーーー!!!照れるな照れるぜおい!!
うあうあうあうあー!!なんだよ、信じらんねぇよ!

し、しかも、昨日・・・初めての、キスをした。
夜の夜中で、こいつは見張りで、俺は夜食を届けに行った。
相変わらずこいつは無口で、美味いともなんとも言わないけれど、
それでも骨すら残さずキッチリ食べる様は見てて心地いい。

ゾロが食べ終わるまで待ってから、食器を片付けようと伸ばした手を掴まれて、
え?っと思って上を向いたら、その、ゾロのどアップが目の前にあって、
その、き、き・・・キス、されてるのに気づいた。


・・・。

ひぁーーー!なんてこったよ!奪われちまったよ!!
初キッスはレモンじゃなくて枝豆だったよ!
旬の、いい枝豆の味だったよ、さすが俺ーーー!!!
ってゆーか、そーさ初キスだったよ!19年生きてて!!
昨日のが初めてのキスだったよ、悪いかクソーーーーーーー!!!!

昨夜のキスの味を思い出してもがもがしていたら、
いきなり肩をぽんと叩かれて、文字通り飛び上がった。
慌てて、かぶさった前髪を掻き上げると、そこにはちょっと苦笑いしたゾロが・・・

「終わった。こんな感じでいいのか?」

手ごろなサイズに切り裂かれた海王類を見て、慌てて肯く。

「お、おおおおおぅ、ご苦労さん!
後は俺がやっから、テメェは昼寝でもなんでもしてていいぞ?」

「いや、運ぶまではやる。どれくらいの量までなら船に乗せられるのかを教えてくれ。」

「お、おー・・・なんだ。め、珍しいな、お前が積極的に手伝うのってよ。」

「・・・そりゃ、お前ぇ・・・・・・・・・」

そこでゾロはいったん言葉を区切り、ちょっと考えてから小さく笑った。

「ちっとでも、恋人の手伝いをしてぇって思うのは当然だろ?」

ゾロの大きな手が、俺の髪を梳く。暖かくて、ちっと剣ダコでごつごつする手。
いずれ大剣豪の座を掴み取るだろう手が・・・髪から頬に、そしてそっと頭を引き寄せられた。

「だが、あんまりそう恥ずかしがるな。
可愛い顔ばっかしてると、昨日みたいなマネだけじゃすまなくなるぜ?」

耳元で囁かれた気障な台詞に、今度こそ俺は盛大に赤面した・・・。



















えぇ
えーっと、先程も言ったんですが。

今、俺と、ゾロは、恋人、同士、って・・・やつです・・・


・・・。

・・・・・・。


あああああやややややひわああわわわわわわわわっ!!!
だめだだめだ、照れちまうよ、だめだって、うわひぃぃ〜〜〜〜っ!

夜中のキッチン。
明日の仕込みの最中に、俺は手を動かしながらも、自分の考えに悶えまくってた。
でも、どうしたって慣れられるもんじゃない。

そもそも、ゾロにコクったのだって。
運命の女神様か、偶然の神の野郎の悪戯だったんだ。

始めは、この思いは墓場まで持って行くつもりだった。
そりゃそうだろ?普通だったら、この思いが成就するかもーなんて考えつかねーぜ、おい。

だって、陸にあがった時、俺はアイツがプロのおねー様を連れ立って、そういう宿屋に入って行った所を目撃したこともあるし、
あんまりレディに飢えてるー!って言う程のものは無いにしろ、ノーマルだって事はよくわかってた。

いや、俺だってばりっばりのノーマルだぜ?
今は何を言ってもいい訳にしかならねぇだろうけど、
基本的に俺様はレディ一筋!!レディを崇め、称え、賛美し!
ん、もー!レディらーーーーーっぶ!!と叫びながら街中を歩いたっていいくらいレディが好きだった。

だけどさぁ。あれは無しだろ。
あの、鷹の目にやられた、潔良すぎる死に様。(死んじゃいねーけど)
惚れるよなー、どうしたってさぁ。

んで、こいつ馬鹿みてーにすげー奴だなと思ってたところを、
アーロンパークで共に命張って戦ってみてさらに再確認させられて。

リトルガーデンで、あわや自分で自分の足を切り落とそうとしたらしいって話しを聞いて、
ジジイのこと思い出して泣きそうになって、でもそんなの気がつかれるの嫌だからこっそり泣いて、
それがムカついたからしこたま喧嘩を売った。

んで、この時期くらいから何かあると喧嘩するようになって、あー俺ってば嫌われてるんだなと思うと切なくなっちまうから、
そうだ、俺だってこいつが嫌いなんだと思い込んで更に喧嘩をふっかけた。

そんで、アラバスタの辺りでは、こういう俺たちであることが一番いいんだろうなーって思うようになった。
普段は仲悪く喧嘩ばっかりしてよ、それでもアイツは俺の作ったメシを一粒残らず食ってくれる。
美味いなんて台詞どころか、感想の一言も口にしない奴だったが、それでも良い。
それでもアイツは、俺の飯を食って鍛錬をして身体を作り、何時の日か大剣豪になるだろう。
それだけで十分だ。それ以上を望むのは分不相応って奴だ。
あいつの隣にいるべきなのは、ルフィみたいな底の知れない奴なんだろう。

・・・なーんて。
思ってたら・・・さ。

空島ではほとんどが別行動で。
大丈夫かなアイツ、無茶・・・はするだろうが、死んじゃいねぇだろうな。
生きてて欲しい、頼むから。そう思ってたら、やっぱり生きてて。
俺と同じように、カミナリにやられて真っ黒くろすけだったが、それでも元気そうでよ。
なんか、それだけでほんわり嬉しくなっちまって。

その後の大宴会で、散々全員で踊りまくって、飯を作って、酒を飲んで、ちょっとほろ酔いで、ふわふわした足取りで、
ちょいと踊りの輪から離れて休もうかなーと思ったら、あいつが目の前にいてさ。

自分でも自覚するくらい、ほっぺたの筋肉が上に向いてるのが判った。
へらーりへらーりって笑っている自分に気がついた。

ゾロがいる、此処に居る。俺の前に、生きて・・・存在している。

すげぇ、嬉しくって・・・なんだかそれが、奇跡みたいに思えて。


ぞろ、おれ、お前のこと好きだ。


喧騒の中でそう呟いた。
聞こえるわけないさ・・・なんて、思った。
だから、いっそたくさん言っちまえばいいと思って、
酔いも手伝って、ふーらふらしながら、ぞろぞろすきすき呟いてた。

そうしたら、ゾロがずんずん俺に近づいてきて、頬の辺りを指で拭う。
それでやっと、自分が泣いていることに気がついた。
その優しい仕草が嬉しくって、ひぃっくとのどを鳴らした。
なんだか、胸が痛い・・・。
泣きながら、自分がどれだけこの男の事が好きかを思うと切なくなった。
俺は傷む胸を両手で抑えて俯き、ゾロは何も言わないで、俺の涙を拭い続けた。










それから・・・すっぽーんと記憶は抜け落ちて。
正気に戻れば、朝もや漂う早朝。

一番最初に目に飛び込んできたのは、ごっつくてあきらかに男の鎖骨だってんだから俺もビビったもんだ。
でかい木の根元で、ゾロにもたれたままぐっすりねこけてた。
えーっとなにこれ、いわゆる対面座位ってやつぅ〜?とか、一人ボケたけどぶっちゃけつまらんし、どうしていいかわからずあたふたして、
慌てて離れようとしても、がっちり背中に腕を回されてて更にパニクった。
とにかく、そーっと腕を外して、ゆっくりゾロの膝の上から立ち上がろうとしたら・・・

ぽっかり、ゾロの琥珀色の目が開いてた。



どれだけの間、二人でそうやって黙ってたかなぁ・・・。
気がつけば、外した筈のゾロの両腕は、また俺の腰に絡み付いてた。

俺の腰を撫でて、それからそっと前髪を梳いてじっと俺の目を覗き込む。

俺たち二人が顔をつき合わせていて、
こんなに静かな空間を共有しているなんてのは初めてのことだった。
何か言ってやりたかったけど、こういうときに限ってよく回る筈の俺の口はぴくりとも動かない。

そろそろ沈黙に耐え切れなくなって、
とにかく何でも良いからこの態勢から脱出しようと思ったその瞬間だった。

「サンジ」

ビックリして呼吸が止まった。
ゾロが俺の名を呼んだ。
今まで、クソコックとかぐるまゆだとか、俺の名前知ってんのかボケとか言いたくなるような妙なあだ名ばっかりつけてくれたこいつが・・・

「サンジ」

もう一度俺の名を呼んだゾロは、俺の腰から手を放し、
頬を両手で包むようにした。
暖かくて優しく撫でる手に思わずうっとりとなって、止まっていた呼吸を再開した。

俺たちはずっとお互いの瞳だけを見てた・・・そうしたら
ふ、と。
魔獣だとかなんだとか、ロクでもねぇ二つ名を持っていたこいつにしては信じられねぇくらいの、
ふんわりととろけたような視線になりやがって。

「サンジ、愛してる。」

とかなんとか・・・
信じられねぇ事を口にしやがった。


それから、また視界がぼやぼやしてきて、
あ、俺ってばまた泣いてる?って思ったんだが、
ゾロはそんな俺をまたぎゅーっと抱きしめて、俺が泣き止むまでずっとそのままだった。
















フー・・・と、紫煙を吐き出し、イスに座ったまま天井を見上げた。

今夜の見張りの夜食も作ったし、明日の仕込みもここまでだ。
今日もお疲れさん、俺。

・・・ってゆーか・・・さ。

て、・・・照れるよなぁ〜〜〜マジで。

今までのことをダイジェストで思い出して、
なんだか一人で勝手に赤面しちまった俺は、ごちんとテーブルに額をぶつけて唸ってみた。

あ、愛してルー・・・だぜ?!
あの、マリモがよ!!!何処の気障だよ!って言う台詞を、
つっかえもせずに言いやがってよ!!

あわわっ、更に顔が熱くなってきて眩暈もしてきたっ。
ううー!愛の狩人とか呼ばれてた俺が情けねぇ!!

麗しく大好きなレディたちに、蝶よ花よと愛の言葉を囁き褒め称えて・・・
でも、その数々の言葉が、ゾロのたった一言で吹き飛んでしまった。
愛と言う言葉が、あんなにも絶対的で力強いものだっただなんてしらなかった。

可愛いレディたちを前にして、ぽわんと幸せなるのは知っていたけれど、
こんなに・・・切なくなるくらいに心臓が締め付けられるなんてのはゾロが初めてだ。
ゾロのことが好きで、ゾロも俺のことが好きだといってくれて、
嬉しいはずなのに切なくもなるって言うのはどういうことなのかな?
思っているだけなのに、悲しくもないのに涙が出てくるようなこの気持ち。

これが恋って奴なんだろうか・・・これが・・・愛って奴なんだろうか・・・。


「おい。」

「ッッッっっとああぁぁーーーーー!!!ぶあーーー!!びっくりしたーーーーー!
なんだてめー!まりも!!!いきなり入ってくんなよビビったじゃねーかクソー!」

よりによって我ながら乙女なこと考えてるなって時に、
都合良く入って来てくれたバカに、シャー!っと威嚇した。

つか、これで心臓が止まってくれたらどーしてくれるんだ、
チョッパー呼んで心臓マッサージされるところだったじゃねぇか!
今のはそれくらいの衝撃があったぞ畜生!!
恋の病で死んだとかカルテに書かれたら洒落になんねーよ!

でも、ゾロはちょっと首をかしげて、「驚かせたか?すまん。」って、普通に返してきやがる。
なんかそれじゃぁ、一人でフーハーやってる俺が馬鹿みてぇじゃねぇかよっ
頬を膨らませて、ぷぃっと横を向いてやった。


ゾロは、ぱたんとドアを閉めると、俺の傍まで来た。
裸の上半身が汗で濡れているから、夜の鍛錬の後なのだろう。

じっ・・・とゾロに見つめられて、どきんと心臓が跳ねた。

喧嘩は目をそらした方が負けだ。
ぶっちゃけ俺はメンチのきり方なら負けたことがねーってのに、
もう心がギブアップしてるのがわかる。

とてもじゃねーけど、ゾロの目がみれねぇんだ。
きれーな琥珀色で、いつまでも見ていたいけど、
実際見てみるとまたすぐにそらしたくなっちまう。
もう、なんなんだよこれぇーーー!

よく、恋愛は好きになったほうの負けとか言うけど、このことか?!
クソー!なんか「負け」ってのがどうしようもなく悔しいじゃねぇか!!!

「ま、まーお疲れさん。水でも飲みに来たか?」

なんとか、どきどき踊りまくる心臓を押さえて言ってやると。
丁度その為にやってきたらしく、

「おう、わりぃな。」とか言って、少しだけ笑った。

う・・・また、どきってした。

なんだかもー、自分でもこまやかに動き回っちゃってるなー
っていうのが判るくらいせっせとゾロにレモン水を作ってやった。
つか、ミントの葉っぱもつけちゃうぞ!

汗をかいたコップを口元に持っていき、
喉を鳴らしながらそれを飲んでいる様を、ぽーっとした頭で眺めてしまった。

今までだったら、汗くせェんだよ!!ウゼェ!とか言って喧嘩になっているような光景だが
実は、ゾロのこんな姿も、ワイルドでセクシーだよなvなんて思っちゃってたりしたんだ。

俺には無いような、厚い筋肉で覆われた逞しい身体にはやっぱりちょっと憧れていたから。

ことりとコップをテーブルに置く小さな音が部屋に響く、
気がつけばゾロに頭を引き寄せられて、触れるだけのキスをしてた。

ゾロの手と吐息の熱を直に感じてぼぉっとする。
セカンドキスは、今度こそレモンの味だった。

「お前もお疲れさん。早く寝ろよ。」

目を細めて・・・なんか、猫好きが猫を見ている時の顔ってこんな感じだよな、って言う表情を俺に向けて、ゾロは部屋を出て行った。
多分、シャワーでも浴びにいったんだろうが、
俺は・・・そのまま腰が砕けて、へにゃりと座り込んでしまった。

おいおい。
キスだけでこんなんなのに、俺、その先なんていけるんだろうか・・・。


そうだよ、恋人になったら当然その先のステップがあるんだっ!!!



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