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プライドを護る戦い
ほのぼのとしたお昼時。ピクリとゾロの耳が震えました。 キンっと刀の濃い口を切り、油断無く視線をあたりに巡らせています。 それを見るサンジ達にも緊張が走りました。 ゾロはゆっくりと立ち上がり、そして・・・ オオオオオオオオオオオオオッッッーーーーーーーーー!!! 百獣の王に相応しい、数キロ先まで届くこの雄叫びは、縄張りに近づく者への警告です。 そして、ゾロが睨み付ける先に、一人の若い雄ライオンがゆっくりと姿を現したのです。 「なんだ、てめぇかよ。懐かしいな。」 「あぁ・・・。」 「一度群れを去った雄が戻ってくるってのぁどういうことか・・・ 判ってねぇとは言わせねぇぜ?」 「わかってるさ。俺は・・・」 若い雄ライオン・・・そうです。 彼は紛れも無くこのプライドから産まれた者。 ゾロの息子でした。 「俺はこのプライドを奪いに来た!」 若い雄は、抜き身の刀を父に向けて吼えました。 もう、子供だった頃のあの愛くるしさはありません。 ここに居るのは、一人立ちをした、立派な男なのです。 「上等!!よくここまで育ったな!」 ゾロも刀を抜いて我が息子にその切っ先を向けました。 これは、子供の頃に良くやったじゃれあいなどではありません。 まさに『プライド』を掛けた、命がけの男の戦いなのです。 『鬼・・・斬りぃ!!!!』 二匹の身体がぶつかり合い、気の波動と言うべきものがビリビリと辺りに響いています。 この恐ろしい戦いを、サンジ達はじっと見つめていました。 今ゾロに挑んでいる、若い雄を産んだ母である者も、静かに息を殺し、 この戦いを見守っています。 まだ幼い、乳飲み子達は、一体何が起こっているのかもわからずに、ぼんやりとこの戦闘を眺めていますが。 もし、ここで代替わりが起きれば、新しくリーダーになった者に、子供達は皆殺しにされてしまいます。 そして、プライドの雌達は、 今まで心と身体を許してきた夫と、その子供を殺した男を前にして、 何も言わずに、股を広げ・・・新しい命をその身の宿すのです。 一見残酷なように見えますが、これは強い者のみが生き残るための、 いわば『掟』。 百獣の王として生まれた以上逃れられない運命なのです。 だから、ゾロは相手が誰であろうと容赦つもりはありません。 このプライドに居るサンジ達は自分のもの・・・ 誰にもやるつもりなど毛頭ないのです! 「三千世界!!!」 ゾロの繰り出した刀身が、すらりと空を裂きそして・・・ 息子の肉体を容赦なく切り裂きました。 「おにいちゃん!!」 静かだったゾロの背後から、悲鳴が聞こえてきました。 息子の、左肩から右の腰までざっくりと裂かれたそこから おびただしい血がびちゃりと地面に叩き付けられ、 カハッカハッと何度か血反吐を吐き・・・ しかしそれでも、彼は倒れはしませんでした。 ふらふらと足元は頼りなく、喉からはヒューヒューと苦しげな音が漏れています。 ですが、その目はぎらぎらとゾロをしっかり捕らえていました。 「どうする。まだやるか?」 その返り血を浴びながら、ゾロは凶悪な顔で笑います。 息子は、ギリリっと歯をかみ締めましたが、 ふっとゾロの更に奥に視線を巡らせたかと思うと、 あれだけ殺気の篭った力強い視線が、まるで今にも泣きそうなまでに歪みました。 彼はそれを隠すように、顔を片手で覆うと。 「俺の負けだ。」 と、潔く自分の敗北を認めました。 「だが・・・もう二度と負けねぇ!」 負け惜しみなどではない・・・これは誓い。 血を吐きながらも、雄々しく雄叫びを上げた彼は、ゆっくりと去ってゆきました。 血まみれのまま去っていった息子を見送っていたゾロは。 その背中が見えなくなると、自分のプライドにゆっくりと戻っていきました。 無言で、刀についた血を落とし、鞘に収めるゾロに、 そろそろとサンジ達が回りに集まってきます。 サンジ達が、返り血を拭ってやろうとするのをさえぎって、 ゾロは、一匹の子供の前に立ちました。 先程の決闘の際、唯一敵となった者の名を呼んだ、ゾロの娘です。 基本的に、ライオンのプライドは母系家族で成り立っています。 プライドで生まれた雄は、年頃になればそのプライドを出て、 別のプライドを奪い取るまで、放浪を続けます。 一方雌は、そのままプライドにとどまり、 大きくなれば、そのままリーダーの妻になるのです。 この娘は、先程やってきた息子と同時期に生まれた子でした。 ですから、そろそろ子を産めるような体になりつつある年頃です。 本来ならば、あと少しして、心の準備ができたら、 ゾロと一緒にハネムーンに出かけ、たくさん可愛がってもらうはずでした。 「テメェは、このプライドの統率を崩しかねねぇ。 ・・・出て行け。」 ゾロの声音に一切の情はありませんでした。 そのまま、娘に背を向けます。 娘は、その冷たい声に一瞬だけ震えましたが、 ぐっと拳に力を込めて・・・そして、その背中にそっと抱きつきました。 「ありがとう・・・お父さん。」 そして、娘は先程の若い雄の消えていった方向に駆け出していったのです。 立派なことに、二度と振り返ることはありませんでした。 〜放送終了後〜 「・・・・・・。」 「ほ、ほらゾロ。もう、落ち込むなよー!」 「そんな、体育座りなんてしてねぇで。あ、メシくわねぇか? 一戦して腹減ったろ?」 「もともとあの二人仲良かったし。 こうなることなんてわかってたことじゃねぇか。」 「来るべき時がきただけだって!」 「一人居なくなったって俺らが居るだろ?」 「子供だったら、また俺らがいっぱい産んでやっから!」 「な?ほら、ゾロぉ、すねてないで毛づくろいさせてくれよ〜」 「・・・うるせぇ〜」 ライオンだって、時々悲しくなることもあるそうです。 ちなみに。 プライドを持たずに、雄一匹雌一匹+子供の群れもあるそうですよ。 |