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欲しかったのはただ・・・ 4
暖かくて大きな手で塞がれた視界の中。わかってたさ・・・と、サンジは心の中で呟く。 野郎は例外なく全員嫌いだとサンジは公言し、 実際そうだと信じていたけれど。 本当は、ゾロ以外の男なんてどうでもよくて、 正直嫌いという感情すら持たなかった。 そう。 自分は、兄であるゾロが好きだったのだ。 ただ、それだけだった。 だから、傷ついた。 そして、無視されるたびに、他の野郎どもに喧嘩を売った。 友達が「危ないわ。」と心配してくれているのにやめられなかった喧嘩、 それもこれも、ゾロに心配して欲しかっただけなのだと悟る。 いや・・・悟ると言うよりは、ただ今まで意地でも認めたくなかっただけ。 自分がこんなにも思っているのに、その視線すら向けてくれないことが、 悔しくて、憎くて、情けなかったから。 『何で無視するんだよ!俺を見てくれよ!』 何度も、こちらを振り向かない背中に、心の中で叫び、 なんとかこちらを向かせようと、あの手この手と手段を変えて喧嘩を売った。 いっそ憎しみや、嫌悪の目でも良かったと思うほどに切羽詰っていて、 今日は特にあること無いこと、汚い言葉でもって挑発していたような気もする。 「・・・サンジ。」 ぼんやりと思考の渦に飲まれていたサンジの名をゾロが呼んだ。 特に、罪悪感や、逆に憤怒などの感情などは感じられない、 ごく普通の・・・そう、普通の優しさのこもった声だった。 サンジはそれに少しだけ勇気を持って 「な・・・に・・・?」と、息だけで返事を返した。 散々あえいで喉が痛かったことと、喉に絡んだ精液のえぐみのせいで、 上手く音を発することが出来なかったからだ。 そんなサンジに、ゾロは「喉が痛むんだな・・・」と、ポツリと呟き。 サンジの目を塞いでいた手を背中に回してゆっくりとサンジの身体を起こしてやった後、 口元にミネラルウォーターの入ったペットボトルを持ってきた。 改めて自由になった目でぼんやりと辺りを見回すと、そこは確かに自分の部屋だったが、 ずいぶんいろいろなものが壊れていたり、本棚にあるものが崩れたりしていた。 自分と・・・そして、剣道の大会であっさり優勝をもぎ取る兄とが、本気で争った後だ。 このあまりに悲惨な状況と、 ・・・そして、ベッドの下には、無残にも破かれてぼろぼろになった衣服。 何も身につけていない生まれたままの自分の姿、 その身体に先ほどまで付着した汚れは、ゾロがふき取ってくれたが シーツにはあからさまな白と赤の染み・・・。 一気に、散々暴力を受け、服を破られて押し倒された恐怖が浮かんできた。 冷たい水をいきなりかぶせられたように、ガクガクと身体が震え始め、 目の前の水を飲むどころではない。 自分からぎゅっと瞼を閉じ、全ての情報を切り離してやろうとしたが、 その瞬間に強い力で抱きしめられ、上を向かされたと思ったら唇をふさがれた。 「んうぅっ!!」 驚く暇もなく、口の中に流される、少しぬるまった水。 それが、喉を通り嚥下した後に、れろりと唇を舐められて、目を開けた。 兄が・・・ゾロが、ほんの鼻の先の距離に居る。 ここ何年も、背中しか見ることがかなわなかったゾロの、 琥珀色の瞳が 今 自分を映していた。 「っ・・・かんね・・・」 サンジは、ほんの数センチ先に居るゾロに訴えた。 「わかんねぇよっ」 ぎゅうっとだきしめられて、ゾロの肩越しに天井を見上る。 「なんでだよぅっ」 そこまで言うのが限界だった。 あとは、嗚咽に邪魔されてしゃべることが出来なかった。 う、うーーーーっと唸り声を上げ、 言葉を紡げない事にイラついて、動かない体を押して暴れた。 なぁ、俺のこと・・・どう思ってる? 最初は、好かれているだろうと思ってた。 でも、無視されるようになって、それが間違いだったのかと思った。 なんとも思われていないんじゃないかと思って・・・ けれど、それを認めたくなくて反抗して。 でも、こんな風に暴力をもって犯されて、 あぁ、自分はどん底まで嫌われているんだって思った所に優しくされて。 もう何がなんだかわからない。 ただ、どうしようもない思いだけが胸を満たして、 心がひび割れ砕けていく・・・。 サンジをここまで追い込んだのはゾロだ。 でも・・・ だからこそ、救えるのもゾロ、ただ一人だけ・・・ ぼやける視線の中で、ゾロを探して縋り付いた。 「あ・・・ねが・・・ね・・・にぃ・・・ちゃ・・・」 ゾロの身体は、記憶にあるとおり温かかった。 そして、犯されている時すら、この暖かさを追っていたなと思った。 「もぅ・・・も・・・・・・た・・・たすけ、て・・・っ」 back<<<■>>>next 心が完全に壊れる前に・・・どうか・・・ |