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欲しかったのはただ・・・ 3


「野郎なんざクズだ。」
それが口癖になったサンジは高校1年生になった。

趣味は料理、手先が器用なので洗濯掃除裁縫も難なくこなすサンジは、
こうしてみればとても女性らしいのに、男が絡むととたんに性格が変わるのは日常茶飯事だ。

その日も、サンジはとても不機嫌だった。
大抵、どこかの女の子が痴漢にあった、なんて話を聞くと一気に悪人のような目つきになるサンジであったが、
その日はさらに不機嫌な顔をしていた。

「サンジさん、なにかあったの?」
と、昼休みに友達のビビが言って来ても、返す笑顔が引きつってしまうほど酷い心理状態だった。

ちらりと時計を見て、昼休みも半分過ぎてしまった頃に、
サンジはようやく重い腰を上げ、ずかずかと女にしてはあまりな歩き方で一気に3年生の校舎まで移動した。
ズバンっとある教室の戸を蹴りあけると、一斉に中にいた生徒たちの注目を浴びたが、それを無視して手にあった包みを放り投げて叫ぶ。

「折角作ってやった弁当、露骨に忘れてんじゃねぇよ!こんクソカビ野郎!」

そこには、兄のゾロと、友人なのか、眼の下に傷のある男に、やけに鼻の長い男・・・そして、オレンジ色の髪のきれいな女の人がいた。

サンジはその女の人を知っている。
時々ゾロが家につれてきたことがあったからだ。

普段、女性とは目線も合わせないゾロだ。
自分の家に女性を招くと言うことは、それだけ彼女のことを認めている・・・
いや、もっと言えば付き合っているのだろう。
その女性が、今はびっくりした顔でこちらを見ていた、その手には手作りらしい小さく可愛らしいお弁当。
ゾロのいる机には、いくつかのパンが転がっているから、
ゾロはソレを食べながら、彼女の少しぶきっちょなおかずをおすそ分けしてもらっていたのだろうか。

『いらないならいらないって、せめて言ってくれよ!』

不覚にも顔が歪みそうになったので、サンジはあわてて教室から去った。
大急ぎで、人気の無い屋上への階段を上って、その一番上に腰を下ろす。

サンジが料理を作り始めたのは、まだ小学校に上がる前、
ゾロをままごとにつき合わせた上に、無理やり泥団子を食わせたのがきっかけだ。

『なんで、オレのつくったおりょうり食べてくれないの?
おにいちゃんは、オレのこと嫌い?』
と、そう泣くので、ゾロはぽんぽんとサンジの頭をなでた後に泥団子を食べた。

もちろん、その後ゾロは腹を壊したし、
そんなゾロを見てサンジが泣きながらごめんなさいを繰り返していたわけだが。
それから、サンジは少しずつ本物の料理を作るようになった。
今では義理の母に
「もうとっくにお料理の腕は追い越されちゃったわね。
お店でも開けるんじゃないかって言うくらいおいしいわ。」と言われる位の腕になったが、
それもこれも元は全てゾロのためだった。
小学校の時の、遠足の弁当だって、まだ歪なおにぎりしか出来なかったが、
母親ではなく自分が作ったものを持って行ってくれた。

だから、無視されるようになってから、ゾロへの食事を作るのは久しぶりだったのだ。
昨日から、両親が不在なので、家の事の全てはサンジに任されたから、
食事だけでなく掃除も洗濯も、ついがんばってしまったのだ。

朝、目覚ましでセットした時間よりも2時間前に目が覚めてしまい、
いつも以上に料理に力が入った。

でも・・・サンジの作ったものは、何も言わずにもくもくと食べるだけで、
いや、食べてくれるならまだいい。ひょっとしたら、他の男友達にやってしまったかもしれない。
彼女の弁当には、子供の自分に言ってくれたように、
『形が悪かろうが、なんだろうが、お前の作った料理が一番美味い』と、
にっこり笑うのだろうか。
自分が、どんなに栄養配分や、見た目や、味に気を配ったものよりも、
彼女からの愛情のこもったものが一番なのだろうか・・・。

やっぱり、そう言うもんだよな・・・と、口の中でだけ呟き、
ひざを抱えて、昼休みが終わるまでの間、少しだけ泣いた。

自分がこんなにも男嫌いになった原因は当のゾロなのに、
まだ一々傷ついている自分がいやだった。





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嫌いなのに、嫌いになれない人。
































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