ゾロは虎である。 ……そう、トラ。 理屈なんか知ったことではない、虎ったら虎なのだ。 とりあえず、産まれてまだ3ヶ月と20日。 まだまだ、動物の世界からしてみれば赤ん坊といった時期。 そんな、赤ちゃん虎のゾロは、 これまた「おいおい、赤ん坊って言うのはもう少し可愛げのあるものじゃないか?」 と、尋ねたくなるくらい、赤ん坊には似つかわしくないツラ…… 曰く、眉間に思いっきりしわを寄せながら、この陽だまりの中で昼寝をしていた。 「……むぅ」 眠りながらではあるが、唸ってみた。 「うー。」 寝返りをうって、もう一度唸ってみた。 「…………………………がぁぁぁ!!!」 吼えて飛び起きてみた。 いつものように昼寝をしようと試みたが、何か気に入らないことがあって、 それのせいで安眠できずに、ひとまずうなったり寝返りをうってみたが、 やっぱり眠れなくて、短気を起こしつつ吼えて飛び起きてみた。 ……といったところだろうか。 (うわぁ、なんて説明的なんだろう。)(爆) 赤ちゃん虎のゾロは、大人になったらどれだけ凶悪な目つきになるか、 酷く将来性を感じさせるほどの見事な三白眼を、さらに細め、 無意識にちらちらと牙を見え隠れさせながら、喉の奥をぐるぐると鳴らした。 バリバリと、ミドリの頭をかきむしったが、やっぱり機嫌は直らないらしい。 「だめだ。」 漢だったら、何があっても諦めねぇ、と豪語する赤ん坊が、白旗をあげた。 「おもいつかねぇ。」 途方に暮れつつ、さらに剣呑な目つきになった。 ついでに殺気も撒き散らしてしまい、 近くに居た小鳥達が驚いてばたばたと飛び去ってゆく。 「サンジ。」 ゾロは、空を見上げながら、愛しい名前をポツリと呼んだ。 サンジと言うのは、今日で1歳を迎える、若い狐のことである。 1ヶ月ほど前であったろうか。ゾロがもう少し小さい頃に出会ったのだ。 ゾロは虎なのに、一部が緑色で、ちょっと変な虎だったが、 サンジは全身が綺麗な金色だった。 普通の狐と一緒にも見えたが、ソレよりずっと綺麗だった。 そして、綺麗ではあったが、乱暴だわ、口は悪いは、オスには容赦ないわで、 とんでもない性格をしていることもわかったが、 この赤ん坊はそれが欲しいと思ったらしい。 「なんで?」とか、聞いてはいけない。 こういうことは理屈ではないのだ。 とにかく、本能の赴くまま思うさまに行動し。 出会い頭に、「お前ぇが、喰いたい!」と、豪語したら、とりあえず蹴られた。 赤ん坊とはいえ、ずいぶん丈夫な虎の子だったので、 なんとかタンコブ一個で事なきをえたが。 それ以来「お前ぇが欲しい!」と言っては蹴られ、 「一口で良いから!」と言っては、やっぱり蹴られた。 どうして蹴られるんだろう……と、首をかしげていると。 一匹の山猫と、一匹のオウムが、木の上から勝手なことをペチャクチャ話している。 「これが、狐を狩るって言う珍しい子供の虎かしら?」 「まぁ、興味深いわね。毛の一部が緑色。」 「子供と言うより、まだ赤ちゃんじゃない。肉は早いんじゃないかしら?」 「だれだ?お前ぇら。」 「あら、気付かれちゃった。 こんにちは、おちびさん。あたしは山猫のナミ、彼女はオウムのロビン。」 「そうか、俺はゾロだ。」 「結構礼儀正しい子ね。よろしく、ちび虎さん。」 「だから、ゾロだっつってんだろ。俺はおちびとかでも、ちび虎でもねぇ!」 最初はそのように反発したゾロであったが。 なんだか二匹とも頭がよさそうだったので、 こいつは一つ知恵を借りようと、相談を持ちかけてみた。 「何で蹴る?って……そりゃぁ、狩られそうになったら普通は反撃するでしょ?」 「なんでだ?」 「まぁ、狩るって言うよりも、狩る宣言だけだけど、 普通は虎にそんなの宣言されたら抵抗するに決まっているじゃない?」 「???」 「ちび虎さん。わかっていないようよ?」 「だぁかぁらぁ〜〜!狩られるって言うことは、食われちゃうって言うことでしょ! 食われたら死んじゃうじゃない!あんただって、死ぬのはいやでしょ?!」 ゾロは、赤ん坊とはいえ虎の子だ。 虎は、その区域で食物連鎖の頂点近くに存在する肉食獣。 ゾロには「狩られる」と言うことがよくわかっていなかった。 「死ぬ?いなくなんのか?サンジが?」 不遜な顔つきが一気に青ざめたのを見て、山猫とオウムは顔を見合わせた。 「お、俺は……ただ、サンジが……」 多くの言葉をまだ知らないゾロが、なんと言えば良いのか分からずに口ごもる姿を見て。 山猫は苦笑をもらし、オウムは微笑んだ。 「食欲とか生存のため以外の欲求の現し方がわからないのね。」 「あんた……本能のままに動きすぎるっていうのも問題よ? いーい?よく聞きなさい。それは、ただ欲しいとか、食べたいとか言うんじゃなくて……。」 「最初は『好きです。』っていうのよ?ちび虎さん。」 「そうそう、あんたにゃ、その台詞は色んな意味でまだ早い。」 と、優しく(?)教えてくれた。 ちなみに、そのレクチャー通りに「好きだー!」と、言ってみたのだが。 やっぱり、蹴られたことは明記するまでもあるまい。 まぁ、蹴り直前の微妙な沈黙と、その後の赤く染まった顔からしてみて、 その一言が、ゾロにとって大きな飛躍をもたらしたことは確かだが。 それから一ヶ月。 毎日のように、サンジの元に日参しては、 「好きだ!」と漢らしく叫んで撃退される日々が続き。 この、森の中では、酷く有名な二匹になってきてしまった。 サンジにとっては不幸な日々であっただろうが。 今はまだ他の生物に手を出したりする存在ではないと言うことが知れ渡ったゾロには、 ほんの数匹ではあるが、友達ができていた。 そんなある日の事。 3月2日は、狐の一回目の誕生日なのだ、と。 やたらと鼻の長い河童が教えてくれたのだ。 『知ってるか?誕生日って言うのはすっげー日なんだぞ?』 河童は、自分の誕生日でもないのに、 ぺらぺらと誕生日のすばらしさを勝手に語った。 (誕生日ってのは、すっげー日なんだと。) ゾロはまだ赤ちゃんだったから、難しいことはよくわからなかった。 だが、河童のあまりの熱の入りように、 「すっげー日」であることは、伝わったらしい。 トナカイはゾロの顔にビビリながら言ったのだ。 (誕生日ってのは、嬉しくなる日なんだと。) サルが涎をたらしながら教えてくれたのだ。 (誕生日ってのは、美味いものが食える日なんだと。) 山猫はニタリと笑って言ったのだ。 (誕生日ってのは、綺麗なものをもらえる日なんだと。) オウムは微笑んで語ったのだ。 (誕生日ってのは、カンシャをする日なんだと。) ……で、最終的に『誕生日』というものをどのように認識したかというと。 (スゴくて、嬉しくなって、美味くて、綺麗な、カンシャをやる日なんだな。) うむ!さすがゾロ! 全部混ぜた上に文法も間違えているが、心意気だけは理解しているので、まぁよし! とにかく、ゾロは、大好きな狐に何かとんでもない物をやる必要があると思った。 というかあげねばならない。つぅか、やる。絶対にやる。 ある種強迫観念にも近いかもしれない。(w ……しかし、いくら考えても、そのとんでもない物を渡すいい方法が思いつかない。 サンジの誕生日を知ってから、とにかく色んな場所に行った。 綺麗な泉、川、湖、花畑、海にも行った、 山にも行った、雪がまだ残っていたがそれでも行った。 でも、そのどこにも渡せるものが存在しなかった。 あまりのことに癇癪を起こしかけ、 いっそ寝ればいい考えが!……とも思ったが、 結局ただイラついただけだった。 ……とまぁ、そんなこんなで冒頭に戻るわけだ。 「サンジ……。」 どんなに愛しい名前をつぶやいても、いい案は思いつきそうになかった。 どうすればいいだろうか、一体どうすれば……。 やっぱり、考えても考えても思いつかない。 しょうがないから、考えるよりも身体を動かすことに決めた。 もう一度、湖や、川や、山や、海にだって行ってみよう。 そこで、サンジにやるための、 スゴくて、嬉しくなって、美味くて、綺麗な、カンシャを見つけるのだ! 「おう!ゾロじゃねぇか!」 「こ、こここ、これから、サンジの誕生日パーティが始まるぞ!」 「そうだ!美味ぇもんがいっぱいだぞ?!どこいくんだ?」 とりあえず、まずは湖に……と言う所で、 麦藁帽子をかぶった猿と、ピンクの帽子をかぶったトナカイに出くわした。 その手には、プレゼントだろうか、綺麗にラッピングされた何かを持っている。 それを見ると、まだ決まっていない自分が不甲斐なくて、思わず唇を噛んだ。 「……俺は、まだいけねぇ。」 そのまま、後ろも見ずに再び走り出した。 二匹がまだ何かを言っていたが、無視して走った。 ちなみに、ゾロは産まれた時から、自覚のない方向音痴であるが、 それでも気力と根性によってカバーした。 まずは、湖でスゲぇ強いといわれたワニに出くわしたのだが……。 「鬼斬りゃぁ〜〜〜!!!」 「げはぁぁ〜〜〜〜!!」 赤ちゃん虎とはいえ、やっぱりゾロだったので、 とりあえずこんな感じだったわけだが……。 「だめだ。」 一言だけ言って、ゾロは湖を後にした。 花畑にも行って、一本一本の花をよーく見てみたが、 「だめだ。」 どうやらお気に召さなかったらしい。 川では、たくさんの魚が泳いでいた。 ためしに数匹捕まえてみたのだが…… 「だめだ。」 とりあえず、リリースしてやった。 山では、青く美しい石を発見した。 でも…… 「だめだ。」 曰く、サファイヤと言う石の原石であったが、ゾロはあっさり無視をした。 見つからない……どうやっても見つからない。 赤ちゃん虎のゾロは泣きそうだった。 だけど、必死で我慢した。 赤ちゃんとはいえ、ゾロは漢だったからだ。 「自分の思い通りにならねぇからって、泣いてごまかすなんざ。 男のすることじゃぁねぇ。」 だけどやっぱり、眉間の辺りがぎゅっと痛くなって。 ゾロは、走りながら、こっそり目の端を拭った。 走って走って走って……気がついたら、月が登ってずいぶんたっていて。 そして、なぜかいつも自分が昼寝をしている付近に戻ってきていた。 結局。ゾロは、プレゼントになりそうなものを見つけることができなかったのである。 (サンジの誕生日。終っちまう。) いつものゾロには珍しく、とぼとぼと歩いた。 しかしその時……ゾロは、ほぼ無意識に鼻をヒクヒクとさせた。 覚えのある匂い……これは。 サンジがいつも咥えている、タバコの匂いだ! いかに方向音痴のゾロとは言えども、 匂いと言う確かな道しるべがあれば、間違えようもない。 ゾロは、とにかく走って走って。そして、茂みを掻き分けた。 ……すると。 「いよぉ、クソ虎。何やってたんだ?ママが心配するぜ。」 サンジが居た。 ゾロがいつも昼寝をする特等席に腰掛けて。 「サンジ!」 ゾロは、先ほどまでの辛い気持ちを一気に忘れたらしい。 さすが、サンジ効果と言うところだろうか。 ただその姿を見れたことが嬉しくて、いつもの様に飛びついた。 ばきゃっ!! 「いってぇ!!」 そして、いつものように蹴られたわけだが、 今日はなんでか、いつもよりダメージがでかく。 頭を打ったせいか、脳味噌がグワングワンと回っていた。 「毎回毎回クソくだらねぇこと喚いてくれる割には、 俺様のこのハレの日をすっぽかすたぁいい度胸してんじゃねぇか。」 動物達にとって、最初の一年。 子供から大人になるまでの期間と言うものは、 とても生き抜くのが厳しいものだ。 もちろん、常に生と死が隣り合わせな分けだが、 それでも、子供から大人になれるのは、本当に運のいい者だけだ。 だから、それだけ最初の誕生日と言うものは特別なもの。 「……サンジの誕生日。終っちまったのか??」 「とっくだよ、こん迷子虎。もう、日も変わっちまった。」 「……………………。」 「……おい?」 「カンシャが、見つからなかったんだ。」 ゾロは潔いので、言い訳はせずに正直に言った。 「考えても考えても、何をプレゼントすればいいのかわからなかった。」 「……ん?なんか、変じゃねぇか? プレゼントはわかるが、カンシャって……感謝のことか?? つーか、そもそも赤ん坊のお前からなんか貰う気なんざ、はなっから俺は……」 「誕生日には、スゴくて、嬉しくなって、美味くて、綺麗な、 カンシャをプレゼントする日なんだろ?みんなから聞いた!」 「……お前、感謝の意味わかってねぇだろ。」 「??だから、スゴくて、嬉しくなって、美味くて、綺麗な何かがカンシャなんだろ?」 「わかってねぇじゃねぇかボケ。」 どうやら、オウムのロビンねぇさんは、 『感謝』をもっと詳しく教えてあげる必要があったみたいです。 「しかも、その形容詞も全部混ぜて考えたら、 思いつくもんも思いつかねぇだろうよ。」 サンジは思わず頭を抱えつつ呻いた。 「つまりー…そのな?とにかく、プレゼントなんて見つからないなら見つからないで、 途中で切り上げてくりゃよかったんだ。」 「だめだ!!」 サンジの言葉に、ゾロは叫ぶように言った。 「や、だから、ダメじゃなくてよ。 仮に今回プレゼントが見つかっていようが、お前がいなくちゃ……」 「俺はサンジが世界で一番大好きだ。」 そう、いつもの様に心からの告白をして。 わけのわからないことを言うサンジを黙らせた。 それから、言葉をつむぐのが相変わらずへたくそなゾロの割には、 一生懸命しゃべった。 曰く…… 「だから、俺は世界で一番のものをサンジにやりたい。 でも、湖を探しても、川でも海でも。山でも、草原でも。 どこに行っても見つからねぇ。 どんなすげぇ獣に出会っても、お前よりすげぇと思うやつはいねぇ。 トナカイは、花を見ると嬉しくなるといったが、 お前と会う以上になんて嬉しくならねぇ。 山で綺麗な青い石を見つけたが、 お前の瞳以上に綺麗だとはおもわねぇ。 お前らが美味そうに食ってる魚を取ってみたけど。 お前以上に……あ、でも、サンジが居なくなるのはイヤだから、 俺はお前を本当に食ったりはしねぇけど。 でも、お前以上に美味そうだなって思わなかった。 俺にとって世界一はサンジだ。 だから、世界で一番すげぇプレゼントって言ったら、サンジ以外思いつかねぇ。 カンシャの正体はきっとお前に違いねぇと思った。 だけど、お前は俺のもんじゃねぇし。 俺のもんじゃないものをプレゼントするのはおかしいし。 俺のもんだったとしても、俺だってお前が欲しいから、 こればっかりはプレゼントできねぇし。 だけど、やっぱりお前にカンシャをプレゼントしてぇし。 これはとても難しい問題だ。 河童に誕生日のことを教えてもらってからずっと考えた。 だけど、思いつかねぇ。 他の皆は、一体どうやって、 スゴくて、嬉しくなって、美味くて、綺麗な、カンシャをお前に渡すことができたんだ?」 ゾロは赤ちゃんだったから。 まだまだ、考えが自己中心的だ。 変なところで人の感情を目ざとく察することはできるくせに、 ごく当たり前のような人の思いを想像し、考えることはできない。 サンジが何を欲しがっているだろうとか、そんなことは一切思いつかなかった。 自分がやってあげたいことしか頭に浮かばなかった。 ただ、サンジのことが好きで好きで好きで、盲目的に好きで。 赤ん坊が母親に寄せる愛情なんかすら凌駕するくらい好きで。 自分がサンジのことが好きだと言うことだけが真実で確かだった。 その思いに突き動かされるままに動いてドツボにはまった。 ……自分が誕生日会に出ないことで、 サンジが心配するかもなんて、考えも寄らなかった。 必死で考えて。必死で言葉をつむいで。 けれど、 「お前は、本気で救いようのねぇアホだなぁ。」と。 ため息とともにそうつぶやかれて。 ゾロは腹の底から凍えたような気がした。 サンジが、ため息をついている。 サンジのこういう時の表情を、ゾロはあまり好きでない。 なぜかといえば、ため息をつくときは、 サンジにとって何か気に食わないことがあった時だからだ。 自分は気に食わないのだろうか。 サンジが嫌いな、クモとかムカデとかの様に、 いずれ心の底から拒絶したような視線を送られることになるのだろうか。 いつもいつも蹴られてはいるが、痛みなどたいしたことではない。 「好きだ。」という言葉を覚えてからは、 それでも時折、あの暖かい手で優しく触れてくれていたから。 それが全て消えうせて、 ……友達以外の獣が自分に向ける、あの冷たい視線を…… 「あ、あぁ、……あぁ、すまねぇゾロ。違うんだ、お前はアホだが嫌ったわけじゃねぇ。 だから泣くな。」 (泣く?泣いてねぇ。男は泣かねぇもんだ。) ゾロはそう思ったが、その子供特有の大きな目からはぼろぼろと大粒の涙がこぼれていた。 サンジは、そんなゾロをそっと抱き寄せて背中をなでる。 そして…… ゾロはびっくりした。 びっくりしたついでに思わず目も見開いてしまって、涙も止まった。 (なんだこりゃ、俺がサンジに食われちまったのか?) サンジの熱い舌が、自分の口の周りを彷徨っている。 思わず、それをぱくりと甘噛みしたら、ぴくりとサンジの体が震えた。 (でもすげぇ、さすがサンジだ。) くちゅくちゅと口の中で唾液が交わるような音を立てる。 (すげぇし、なんか嬉しくなるし。 美味ぇし、目ぇ瞑ってるサンジは綺麗だし……これがカンシャか?) 正直、サンジが自分にしてきた行為がどういうものなのかわからない。 ただ、大好きな人とのキス……というものを体験して。 ゾロは、「あぁこいつは最高だ、これから何度もやってみてぇ」と認識した。 ふわりと、いい匂いを残してサンジは離れ、こう言った。 「もし……お前が無事に1歳の誕生日を迎えられたら。 そして、その時俺も生きていて、 なおかつお前がまだ、俺が好きだと御託を述べるなら。 今度は俺が、凄くて、嬉しくなって、美味くて、綺麗なもんを、 感謝の気持ちとともにくれてやる。 そしたら……一年後の、俺の2歳の誕生日には、 その難問も解けているだろうよ。 だから、お前が言う、凄くて、嬉しくなって、美味くて、綺麗なプレゼントってのは、 そのときでいい。 だから、生き残れ。何が何でも。 明日も明後日も、これからもずっと、馬鹿みてぇに俺のそばで吼えてろ。 今回のお前からのプレゼントはそれでいい。」 (……まいった。) サンジの真剣な顔を見ながら、赤ちゃん虎のゾロは思う。 (サンジを嬉しい気持ちにさせたかったのに。 俺が嬉しい気持ちになっちまった。 やっぱりサンジは世界一だ。) と、誇らしく思う反面。 (俺はまだまだ修行がたりねぇ。) とも思う。 ゾロとしては、今答えを出して、そのプレゼントをあげたかったから。 やっぱり悔しかったし。凹みもしたけれど。 (……でも。 サンジがこれでいいって言うんなら、 これでいいのかもしれねぇな。) サンジに抱きつき、そして抱きしめられながらゾロは目を閉じた。 走り回って疲れていたし。 このまま二人で眠れたら最高だなぁとか考えた。 赤ちゃん虎は、こうやって少しずつ成長していくのだ。 ロロノア・ゾロ まだ、3ヶ月と21日の赤ちゃん虎。 大人になるには、もう少しの時間と経験が必要だが。 ……生涯最初で最後の狐狩りには成功した模様。 めでたし、めでたしv |