「Happiness or a misfortune」










あの第一印象最悪な出会いを、不運と取るか、幸運と取るか。














いー天気だ。


馬鹿みてーに真っ青な空だ。雲ひとつねぇ晴天だ。

だが畜生。俺は不幸だ。

何が悲しくて、こんな筋肉ダルマの緑腹巻を見て、
動悸息切れ眩暈その他もろもろの症状に悩まされなくちゃいけないんだ。

俺は一日寝っぱなしのあいつと違って仕事もたくさんあるし、
こんな事にわざわざこの繊細な心を煩わせている暇なんて無いのに。


あーもう!本気で俺は可哀想だ。神がいるならどうして助けてくれないんだ!

っていうか、キューピットの仕業だとでも言うんだろうか。
だとしたら、例え見た目が子供だろうが蹴り飛ばして天の彼方まで送ってってやる。

なんなんだよ、あのひでぇ顔。大口開けて、でけぇいびきかいてよ。
さらには……あーあ、よだれまでたらしやがって。
醜いったらありゃしねぇ!
俺以外のヤローなんざ公害だ、公害!!



なのにクソ。なんでだ。俺の目は何時から腐れちまったんだ。
あいつの格好悪りぃ所なら何時間だって言い続けられる。

なのにクソ!クソクソクソクソクソッタレ!


なんで!


なんで、格好わりぃところが⇒可愛い、に変換されるんだよぉぉぉぉぉぉ!!!!!




ちげぇだろ?!
可愛いって言うのは、ナミさんみたいな麗しい女性に使うべき言葉だろ?!
つーか、俺が今まで可愛いと思ってきたレディに対する冒涜だろうが!



なのによぉ!あいつがだらしねー格好で甲板にねっころがってて、
なんかむにゅむにゅ言いながらころんって寝返りを打った瞬間によぉ!

なんかこー『きゅん☆』……って、きちまうんだよ!


なんでだー!

なにが『きゅん☆』っだよ!寒いっつーの!
病気か?これは病気なのかァァァァァァ!!!




「だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!もーむかつく!さいてーだ!」




思わず心の叫びが口をついて出た。

後ろの方で、ウソップが脅え。
チョーッパーが大慌てでマストの陰に隠れたのを目の端に捕らえながら、
俺は高く振り上げた足のかかとを、そのまま憎いあんちくしょうの腹に叩き落した。



もちろん、その後は恒例の大喧嘩。





……ああ、不毛だ。





















深夜。後片付けやら明日の仕込やらを全て終えて、
俺は今日最後の一服の為に甲板に出た。

胸のポケットからタバコを取り出して火をつける。
ことさらに深く、深呼吸をするように煙を吸って、ニコチンを肺の奥まで送った。
もう慣れた匂いだ。
ほんの少し気分がよくなったような気がする。

だが……






……イラっ……


……イライライライライライライライラっ!!!!



だめだぁ!!!タバコでも沈まんねーよ!
いや、タバコをすってっからこの程度ですんでんのか??
ちくしょー!クソむかつく!あのハゲが!マリもんが!腹巻オヤジがァァァァ!!

思わずこれっぽっちもきかねぇタバコを海に放り投げた。
小さなタバコの光が弧を描いて闇の中に消える。

「もー……やだー。」

なんか、子供みたいな口調にすらなってしまった呟きを残して、
俺は手すりに背中を持たせて、そのままずるずると座り込んだ。

あまつさえ、すんと鼻をすすったら目の奥までぎゅーっと痛くなる。

おいおいおいおいおい、なんだよ。夜、一人でこっそり涙を流すなんさ。
自分でもびっくりなほどの乙女っぷりじゃねーか。
なさけねーを通り越して、笑いがこみ上げてくるっつーんだよ。
けっけっけっけ……えっええ……えーん。


膝に顔を埋めて、そのまま泣いた。


つれーよぉ。
なんで、ナミさんとかロビンちゃんじゃなくて、
あのクソヤローが頭んなかぐるぐる渦巻いてんだよ。
渦巻いてんのは俺の眉毛だけで十分だっての。

苦しーっつーんだよ。
あいつにさー、触れてみてぇんだよ。
だから、喧嘩の時に、蹴りとかあいつの拳とかが、
例え痛みと共にでも触れると嬉しーなとか思っちまうくらい、俺は腐れてんだよ。

どれくらいかっつーと賞味期限なんざとうに過ぎた納豆くらい腐れてんだツーの。


おもわれてーよ。好きだって言ってほしーよ。愛してほしーっつーんだよ畜生。


しゃーねーだろ。

泣くくらい思っちゃってんだからよ。
イライラするくらい好きんなちまったんだからよ。

痛くてもいいからどうにでもしてーってくらい、愛しちゃったんだよ。


クソ。涙、とまんねーよ。

「ぞろぉ。」

俺様としたことが、鼻をすすったとたんにずひって音がした。


バラティエにいた時、レディに告白する時は当たって砕けろの精神でやっていたけど、
今回はそれも駄目なんだ。

こえーよ。無理だっつーの。
男同士なんだぜ?キモイだろーがよ。
俺が他のマッチョ男にんなこと言われたら、まず蹴るね。そういうもんだろ?

でも俺、ゾロにそんなこといわれたら。生きていけねーよ。
オールブルーに身投げせずにはいられねぇよ。

俺、どんなに料理の事でスランプに陥った時でも、ここまでへこんだことねぇよ。
こう言う時、どうすればいいんだよ。

じじー助けてくれよー。






ごつん。

安全靴っぽい物が甲板を蹴る音がした。マジかよ。

涙でぼやぼやする目を根性で開いて前を見る。
やっぱり、黒い安全靴。黒のズボン、んで緑の腹巻。

俺はここまで見て、それ以上上を見るのを止めた。

また膝に目線を落として、さらに膝を抱きしめる。


「何やってんだてめーは。亀の真似か?」

 第一声がそれかよ。あークソムカツク。

「うっせー黙れ。おめーと違って繊細なオレ様の心は、
いまメランコリックな感じに浸ってんだよ。
わかったらとっとと去れ。行っちまえ。消えろ。
そして、クソして寝ろ。」

「寝れるか、俺は今夜見張りだ。」

「あらそー、それは失礼いたしました。んじゃ、頑張ってケツかりませ。」



相変わらず顔を上げずに言う俺の耳に、なにやらため息が聞こえてきた。



「腹、減った。」





 ……。





「うえっ」


ちくしょーちくしょーちくしょー!

俺、やっぱこいつのこと好きだ!


「うぐー!うえっうぐっぶえぇ〜。」

人の気持ちなんざこれっぽっちも考えねー。
俺がこんな風に泣いてても、何にもしてくれねー、
つーかこれっぽっちも気がつかねー。

せめて見て見ぬ振りとかもこいつにとっては高度なのかよ。
泣き顔なんざ見られたくねぇのに、こいつは俺に飯を作れと言う。
腹減った奴には、自分がどんな状況だろうと食わせてやるって言う
俺の信念に乗っかってきやがる。

「わがったっつーんだよ。作ってやんよ。酒はバーボンでいいか?グゾ。っく。
適当なもん作って見張り台にもってってやっがら、っふぐ。
さっさとこっから消えろ!見張り台に登れ!天まで登れ!うぐうううう〜〜〜。」



それなのに好きだ。
この最低最悪鈍感無表情無感動無骨で硬派なまりもんヤローが好きだ。
自分が情けねーよ。
何でこんな奴好きになっちまったんだよ。
恋しちまったんだよ。
俺は不幸だ、クソ。





「……そうか、じゃ頼んだ。」





それだけ言って靴音が遠ざかる。

行っちまうのかよゾロ。俺が泣いてんのにそれだけかよ。

はは、そうだよなぁ〜男の泣き顔なんざむさっくるしーだけだよな。
解かるぜ。





やっぱこれって、俺のことなんとも思ってないって証拠だよな。
つーか、仲間としてもどうなのよって気がしてきた。
やっぱり、なんも言わなくて正解って奴なのかな。わざわざ死に急ぐこともねぇだろ。


ひこっと顔を前に向けると、もちろんそこにゾロの姿は無くて。

俺は自分で去れといっておきつつやっぱり悲しくて又泣いた。










どうやっても涙が止まりやしねぇので、
相変わらずしゃくりあげながらキッチンに戻った。

窓に映った自分の顔を見ると、さすがの俺様もぶーな顔になっているのがわかる。

あーあ。だけど、とまんねーんだもん。ホントに。

あいつ用の酒瓶を取り出して、それから適当な残り物で夜食を作ろうとする。
って、やべぇ。泣き続けてたもんだから鼻が詰まって馬鹿になってやがる。

びーっと思いっきり鼻をかんで。頭の中に大量のレシピを思い浮かべる。

そうだ、俺様は一流コック。
料理だけは、これに関して妥協はゆるさねぇ。頑張れ俺。


しょっぱすぎるメシなんて作ってたまるか。



























会うんじゃなかった。見ちまうんじゃなかった。無視してりゃ良かった。

重く、強い言葉に。
あの野望に向かってのみ燃え、そして輝く瞳に。あまりに清潔に見えた血潮に。



ただ惹かれた。






あの第一印象最悪な出会いを、不運と取るか、幸運と取るか。






そんな風に聞かれたら、俺ははっきりと不運だと言うね。

だってそうだろ?
愛されるより愛する方が良いなんて、ありゃ嘘だ。
タダの強がりって奴だ。


愛したら愛した分だけ帰ってこないと……やっぱ、つれぇよ。















「うし、さすが俺様。完璧だぜ。」


結構気に入ってるDOSUKOIパンダのピンクエプロンをはずしながら、
俺は自分自身を賛美した。

どんなにへこんでいようが、死にかけていようが、
料理だけはぜってぇに手をぬかねぇ。これが俺のポリシーだ。
ルフィ風に言うならポリスーってやつか?ははは、つまんねー。


できたてほかほかの料理をバスケットに詰め込み、
それを頭に乗っけた状態で、見張り台までの梯子をするすると登っていく。

又あいつの顔を見て泣いちゃったりしねぇかな。
やっぱ嫌だしよ、泣き顔見られんのって。

ま、あいつはなんとも思ってねぇんだろうけどな(怒)



「おいクラ、クソ剣士。夜食だ。
ほっぺた落として出血死する勢いで味わいやがれボケ。」


どうせ無理だとわかっていながらつい言っちまうんだよな。

こいつはメシを味わって食うと言う事をしない。
ただ、かっこむだけだ。

一見ルフィと似てるように見えるけど。
あいつはあれでちゃんと味わって食ってんだよ。

だけど違げぇんだこいつは。
ほんと、ただのエサやりって感じだよな。
無表情無感動にもほどがあるだろ。
たまには、料理に関する感想位言ってみやがれってんだ。


酒瓶と料理を渡してやると、一応礼を言ってきて。
後は無視だ、そのままいつもの用にメシをかっ込んでる。



ああ、本当に。可哀想な俺。



「ん?おめぇ、毛布は?」

「あ?」

「あ?じゃねーよ。
てめぇ、いくら馬鹿でもここが冬島の海域だってわかってんだろーがよ。
ナミさんが夜半過ぎから雪が降ると仰ってたじゃねーか。凍えて死ぬぞ。」

「あー……。忘れた。」

「死ね!マジでそのまま凍えて死ね!」


ついでに俺も死んじまえ!
なにが、ゾロと又少し話せる時間が増えただよ。
なーにが、あいつの為に出来る事が一つ増えただよ!
っだー!俺様けなげ!


「ったくよー!しゃーねーから俺が取ってきてやる!」

「それくらい俺が…」

「うっせーマリモ!黙って見張りしてろ!」


ゾロが梯子を降りようとしちまうより先に甲板に下りて。
そのまま男部屋に入る。


お、これだな?ゾロの毛布は。
ソファーの上に乱雑に置かれたそれをとる。


……あークソ。ゾロの匂いがしやがる。
これに包まって寝たら、ゾロの夢とか見れねーかな。

うわーお、なんつー寒い事考えてんだよ俺!


少しだけ迷いつつも、やっぱりゾロの毛布を手にとって見張り台まで持っていく。

ゾロの顔を見る前に、ちょいと一服したくて、
火をつけたタバコをくわえながら梯子を登った、


見張り台の中には入らずに、まだ縄梯子に足をかけた状態で
酒瓶を傾けるゾロに毛布を投げつけてやる。



「うらよ、毛布だ。ありがたく使え。」

「おう、サンキューな。」

「メシのほうは食い終わったのか?」

「ん?ああ。ごちそーさん。」

「よし。じゃ、バスケット返しやがれ。」

「おう。……美味かった。」

「あ?あったりめーじゃね……か?」





 ぽろり。





「おい、タバコ落ちたぞ。あぶねーじゃねぇか。」

「……今、なんつったよお前。」

「いや、だからタバコが…」

「違げぇよ!その前だよ!」

「ごちそーさん?」

「違げぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


違うんだよ!

もっとこー俺にとってすっげぇ夢みてーな事言わなかったか?こいつ。


思わず心臓が止まっちまったよ!心不全だ!やべぇ!
しかも、又涙出てきちまったよ。あーもう俺の泣き虫さん!


「もっがい言えよグゾ剣士!」

「な、何で泣くんだ!さっきもそうだしよ!」

「うっぜー!いいからもっがい言えー!」



料理は俺の全てだ。

俺から料理を取ったら、この美貌と華麗な足しかのこらねー程だ。



だからよ。男同士がどうのこうのなんて寒い事はいわねぇから。

頼むよ。
もう一回言ってくれ。


お前にとって、俺の料理ってなんだ?

三大欲求の一つか?
あるから食うだけなのか?
ただのエサなのか?
命を繋ぐ物か?






「美味ぇよ。」




言った。

この腐れマリモが。超不貞腐れながらだったけど。


美味ぇって。確かに俺の料理に言った。



「俺ァ今までメシなんざ味わって食ったことがねぇ。食えりゃ良かった。
そうすりゃ明日も生きていける。」



なんだよ。やっぱてめぇは今までエサ食ってたのか。さすが魔獣様だぜ。



「だが、お前ぇの料理は少し違うな。」



腕に巻いてあった黒手拭をはずして、俺の顔を乱暴にぬぐった。



「上手く言えねぇけど。お前ぇのメシ食いだしてから傷の治りようが早い。
寝ぼけることが少なくなってきて、敵と対峙してる時もやけに頭がさえる。」
 

あたりめぇだ。
怪我の治りが早いのはチョッパーが仲間になったってのもあるが、
そもそも身体を作ってんのはメシなんだ。

俺が作ってる限り栄養配分は完璧だ。

俺が、この俺が、一人一人に愛情込めて作ってんだ。
おめぇの体の一部は確かに俺の作り出した物で構成されてんだ。



「最近思うぜ。俺の野望までの道は、確かにお前ぇの手でも作られてんだなってよ」


震えた。何がって膝がだ。

だってよぉ。
大剣豪になる為の人生の中に、
確かに俺って言う存在がいるって認めてくれたってことだろ?

無視されてたわけじゃなかった。
確かにこいつの瞳の中に俺はいた。

今まで食ってきた飯の中でも、俺の作る飯は違うって言ってくれた。
俺は特別なんだって言ってくれた。
一人の人間として、認めてくれたってことだろ?

なぁ、そう言う事だろ。今お前が言った言葉って。







……畜生。嬉しい。







「どわ!お前ぇ、何してんだ!!」


何してんだって、梯子から落ちかけてんだよ。
あんまり嬉しいもんだから、膝から下の力がマジで抜けたんだ。

間一髪の所をゾロに腕を掴まれて、
見張り台からぶらぶらしてる俺を、ゾロはそのまま引っ張り上げた。

乱暴に見張り台に転がされる。


「ったく、俺はおめぇが何考えてんだかこれっぽっちもわからねぇ。」


馬鹿野郎。それは俺の台詞だ。
俺もわかんねぇよ。

こいつは基本的に言葉をしらねぇんだな。
だから、ここぞって時に何にも言ってくれねぇから。

今回は奇跡って奴だ。
ナミさん、今夜は雪どころの話じゃねぇ。きっと猛吹雪だぜ。



「なぁ。お前ぇ、何で泣いてんだよ。」


ああ、そういや俺まだ泣いてたんだっけ。
でも仕方ねぇだろ、止まんねぇんだから。

身体にも力が入んねぇ。ほっとしたっつーかなんつーか。

黙ったまま座り込んでたら、信じらんねェ事にゾロのほうから近寄ってきやがった。
そのごっつい手が俺の頬に触れた。


「泣くんじゃねぇよ。俺ぁどうしてやればいいのかわかんねぇよ。」


なんだよ、その情けねぇ顔。
未来の大剣豪が何でそんな面してんだよ。

まるで、途方にくれたみたいな。
何で、俺にそんな顔を向ける必要がある?
だって、さっきとか俺が泣いてても無表情の無感動……あれ?

あの時俺、お前の顔全然見てなかったっけか?

お前、あの時もひょっとしてそんな顔してたの?


あー、なんか、さっきの事で頭がいっぱいいっぱいだ。
上手く考えがまとまんねぇ。



「普段はあんなに生意気なくせに、毎夜毎夜メソメソしやがって。」


あれ?知ってた?


「女にでも振られたのかと思ってほっといたら、
なんでか今夜に限って俺の事呼ぶし。」

まじかよ!聞かれてた??!


「なぁ、お前ぇはそんなに俺のことが嫌いか?」

へ?

違ぇだろ?俺の事嫌ってんのは……でも、俺の料理美味ぇって言った。



俺は、根性すえて声を絞り出した。

「お前……は?」

「は?」

「お前は、俺のこと、嫌いじゃ、なかったのかよ。」

つっかえながら何とか言った。


したら、ゾロの奴。
俺の台詞が信じらんねぇみたいにぱちぱち瞬きしたかと思うと。
いきなりそわそわし始めやがった。

目線をあっちやったりこっちやったりして
「お、お前ぇもまさか……」
とか呟いて言いよどんで……。













雪が降ってきた。道理でクソ寒みぃハズだよ。
雪が降ると、音がなくなるという。だから、辺りはしんとしてた。


そういやぁ。なんで俺、ゾロの胸に抱きこまれてんだろ。

頭ん中真っ白だ。雪に埋もれちまったみてぇだ。

「嫌なら抵抗しろよ?」

ゾロ。なんでお前ぇ顔赤いの?
しかもなんだよその台詞。どっかの少女漫画の台詞みてぇ。


でもまぁどうでもいいや。







ああ。唇が……あったけぇ。












泣いてっから、目の前がぼやけてて良く見えなかった。
でも、すげぇ気持ちよくって。
俺の頭ん中は、こいつと出会ってからずっと抱いていた感情一色になる。

『ぞろぉ。俺……おめぇの事好きだぁ……。』




どっかで、プチンと何かが切れた音がした。









































いー天気だ。

馬鹿みてーに真っ青な空だ。雲ひとつねぇ晴天だ。
昨日雪降ってたのが嘘みてーだ。朝日が綺麗だぜ。







こいつとの第一印象は最悪だった。

命を掛けて野望を追うこいつの魂に俺は引かれて、
それなのに、こいつの目には俺は映っていなかったんだから。

そりゃそうだよな。

あの時の俺は、ジジイを理由に夢を追うことから逃げてたんだからよ。
こんな俺なんかに頭ん中野望でいっぱいのマリモのお眼鏡なんかにゃ
叶うわけがねぇ。


そう、俺は思ってた。






「ケツが痛てぇ。腰が重ぇ……。」

「幸せな痛みって奴だろ?まぁ、寝とけ。」

こっこのクソ野郎が!爽やかに笑ってんじゃねぇ!
人にあんなごむたいな事しやがって。


だが、こいつは素っ裸のまま
(いや、俺もそうなんだけど。よく風邪ひかなかったよな、お互い。)
俺の髪をわしゃわしゃ撫でてた。



「金髪美人だし。根性はあるし。口悪ィし。
身体の相性もばっちりだったし。ガラ悪ぃし。
その上料理もうめぇんだから、お前ぇ最高だよな。」

なんなんだよ。誉めてるつもりなのか?それ。
悪口も混じってるっつーの。

しかも、昨夜からずっとお前喋りすぎだぞ。
俺はお前が何にもしゃべらねぇからやきもきしてたっつーのに。

何がなんだか急すぎてわかんなくて、
俺はつい見張り台の床にしわくちゃになって置かれていた毛布に顔をうずめた。



「なんだ?照れてんのかよ。」

ゾロが俺の顔を覗き込もうとしているのがわかる。

俺は絶対ぇ見せてたまるか!とばかりに毛布をしっかりと握ったが、
隠しきれていなかった耳をつままれて
「見事なくれェ真っ赤だな」とか言われた。

「てんめぇ!!いけしゃーしゃーとっ!俺には朝飯の仕度があるんだよ!どけ!」

「いやだ。」

「い、嫌って、何だそりゃぁ。」

「ナミか誰かにやらせりゃ良いだろうが。
悪りぃが、こんなにも幸せな朝をぶち壊したくねぇぞ俺は。」

「し、幸せだとぉ??!
どの面引っさげてロマンチックな事言いやがるかこの極悪マリモは!
似合わねーんだよ!寒いっつーの!凍えるっつーの!」

したらこいつ、毛布で改めて俺の事包みやがって、ぎゅっと……こう。


「お互い片思いだと思ってた気持ちが通じ合った記念すべき朝じゃねぇか。」

耳元で囁かれた。


どうしようもなく乙女で、どうしようもなくアホな俺の心臓は、
『きゅんv』と、音を立てて、俺を居た堪れない気持ちにさせた。







ふと、いつも頭の中にあった疑問がよぎって行った。

あの第一印象最悪な出会いを、幸運と取るか、不運と取るか。











「俺達、出会った瞬間から両思いだったんだな。」


ゾロは満面の笑顔で笑いながら、もみもみと俺のケツをもんできやがった。

とたんに脳天まで走った痛みに思わず丸まった。







どー考えても不運の方だな。うん。







ゾロサイド>>>




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